用語集

クラウドモニタリングに関する疑問に答えます。クラウドモニタリングの定義、メリット、使用されるツールとは?

2023年12月04日 | min


クラウドモニタリングとは?

クラウドモニタリングは、クラウドベースのサービスとアプリケーションの健全性、性能、可用性、セキュリティを維持するための分析、追跡、管理を可能にする一連の戦略と機能で構成されています。脆弱性をプロアクティブに特定することで管理者を支援し、対策を促進させ、エンドユーザーのエクスペリエンスへの悪影響を未然に防ぐ効果をもたらします。

クラウドテクノロジーに依存する組織にとって、クラウドモニタリングは極めて重要な役割を担っています。自動ソフトウェアとして実装されるクラウドモニタリングにより、クラウドの健全性とパフォーマンスについて完全なインサイトを取得できます。

クラウドモニタリングを行うことで、以下のことが可能になります。

  • 分散したクラウドデータの監視と追跡。

  • ファイル、アプリケーション、ユーザーの詳細を可視化し、潜在的な侵害リスクを特定して排除する。

  • クラウドを継続的に監視して、リアルタイムのファイルスキャンを確実に実行する。

  • 定期的な監査とレポーティングによるセキュリティ基準と法規制の遵守。

  • 監視ツールのさまざまなクラウドプロバイダへの統合。

クラウドモニタリングはなぜ重要?

クラウドの利用が増加し、シームレスなオンラインサービスが顧客にとって当たり前となった現在、企業は、クラウドベースのアプリケーションが期待どおりに稼働していることを確認するための、継続的で信頼できる手法を必要としています。最適ではないクラウドエクスペリエンスは、ブランドの評判、顧客ロイヤルティ、従業員の生産性、さらには収益に悪影響を及ぼすおそれがあります。

人間にとって定期的な健康診断が重要であるのと同様に、組織にはクラウドモニタリングが重要です。健康診断で異常が発見されると、医師が対処します。クラウドモニタリングで問題が発見されると、IT 管理者は問題を解決するか、アプリケーションのパフォーマンス、可用性、またはセキュリティが低下しないように回避策を見つけることができます。クラウドモニタリングの最終的な目標は、高性能で信頼性の高いクラウドサービスとアプリケーションを維持して、顧客により良いサービスを提供し、同時に従業員の効率と生産性を維持することにあります。

クラウドモニタリングを利用することで、優れた顧客エクスペリエンスの提供、問題が発生する前の脆弱性の特定と対処、アプリケーションの誤動作によるビジネスのダウンタイムや運用の中断の回避、秘密データの保護、セキュリティおよびプライバシー規制遵守の継続ができるようになります。

クラウドモニタリングと従来のインフラモニタリングとの違いとは?

サーバー、ネットワーク、システム、プロセスの監視はインフラモニタリングとも呼ばれています。物理インフラ全体のオペレーションを分析、追跡して、正常に実行されていることを確認するプロセスです。物理ハードウェアとネットワーク接続は常に正しく動作させておく必要があるため、これはクラウドモニタリングと同じくらい重要です。

クラウドモニタリングは、物理的なインフラではなくクラウドベースのアプリケーションとサービスを監視するという点で、従来のインフラモニタリングを越えています。。アプリケーションデータ、パフォーマンス、稼働時間、使用状況などに関する幅広いメトリクスを収集して、潜在的な問題を分析し特定できます。クラウドモニタリングでは、組織によるクラウドリソースの使用状況に関する情報も収集します。この情報は、クラウドの予算、パフォーマンス、容量などについて、より適切な情報に基づいた意思決定を行う際に役立ちます。

また、クラウドモニタリングは、インフラモニタリングと異なり、クラウド運用モデルによっては、分析する実際のインフラが存在しない場合もあります。クラウドでは、サーバー、スイッチ、ファイアウォール、ストレージ接続ネットワークはもちろん、ハイパーバイザーさえ持たずに運用しても全く問題ありません。サービスとしてのインフラ(IaaS)またはサービスとしてのプラットフォーム(PaaS)モデルを使用している場合、クラウドサービスプロバイダが物理ハードウェアの管理とメンテナンス業務を全て担当します。

クラウドモニタリングとインフラモニタリングは次の点でも異なります。

  • 価格:クラウドモニタリングは、各物理コンポーネントにモニタリングソフトウェアを必要としないため、通常、インフラモニタリングよりも安価です。
  • セットアップ時間:クラウドモニタリングは通常、デプロイを迅速かつ容易に実行できます。使用している監視ソリューションの種類によりますが、インフラモニタリングは設定に数日かかる場合があります。
  • 情報の範囲:クラウドモニタリングの対象は物理ハードウェアのみに限定されていないため、通常、より広範囲の情報が得られます。アプリケーションを掘り下げ、トランザクションやコーディングのメトリクスに至るまで情報を収集できます。

クラウドモニタリングの対象サービス

クラウドモニタリングは、AWSAzure などのパブリッククラウド環境を監視し、管理するために導入されることが一般的です。しかし、AWS や Azure などのパブリッククラウド以外でも、適切なモニタリングを導入することで多くのメリットを享受できるクラウドサービスがあります。次に挙げるサービスは、アプリケーションの監視ツールやサービスを介して監視することも可能ですが、クラウドモニタリングを活用することで、さらに深いインサイトと保護を得ることができます。

クラウドモニタリングをチェックリストに含めるべきクラウドサービスの一覧は次のとおりです。

  • Microsoft Office や Salesforce などのサービスとしてのソフトウェア(SaaS)ソリューション

  • Microsoft SQL などの サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)ソリューション

  • パブリッククラウドプロバイダがホストするサービスとしてのインフラ(IaaS)サーバー

  • サービスとしての機能(FaaS)サーバーレスアプリ

  • Heroku などのサービスのアプリホスティング

クラウドモニタリングソリューションの種類

クラウドは多くの要素で構成されており、顧客や従業員のニーズに応えるには、全ての要素が適切に連携して動作する必要があります。そのため、クラウド環境をモニタリングする方法も複数あり、それぞれが異なる要素に焦点を当てています。

最も一般的なクラウドモニタリングソリューションは次のとおりです。

  • データベースの監視:可用性、クエリ、プロセス、リソース消費、リアルタイムの使用状況データ、データの整合性をレビューする。
  • Webサイトの監視:クラウドでホストされている Web サイトのトラフィック、ユーザー統計、可用性、プロセス、セキュリティ、リソース使用状況を追跡する。
  • 仮想ネットワークの監視:ルーター、ロードバランサー、ファイアウォールなどの仮想化されたネットワークコンポーネントを監視する。
  • クラウドストレージの監視:ストレージリソース、パフォーマンス、ユーザー、データベース、プロセスを分析する。
  • 仮想マシン(VM)の監視:VM のパフォーマンス、トラフィック、ユーザー、容量、動作ステータスに焦点を当てて監視する。
  • アプリケーションパフォーマンスの監視:アプリケーションの可用性、パフォーマンス、使用状況、セキュリティを測定する。
  • クラウドサーバーの監視:サーバーのパフォーマンスと可用性を追跡し、アプリのパフォーマンスと関連付ける。
  • エンドユーザーエクスペリエンスの監視:ページの読み込み、ネットワークリクエストの速度、トラフィック、クラッシュ、ユーザーの統計、クリックされたリンクなどを測定し追跡する。
  • セキュリティとコンプライアンスの監視:クラウドのデプロイ全体のセキュリティ機能を分析し、潜在的な脆弱性やコンプライアンス違反の可能性がある領域を警告する。

クラウドモニタリングの仕組みとは?

クラウドモニタリングの仕組みを理解するには、まずクラウドモニタリングでどのようなツールが利用可能かを理解する必要があります。最も一般的なのは、クラウドプロバイダーが提供するツールです。これらのツールはクラウドサービスとセットで提供され、追加のインストールは不要で、統合が容易なため、多くの企業はこのオプションを選択します。

もう 1 つの選択肢は、SaaS プロバイダーが提供する独自ツールの利用です。SaaS プロバイダーはクラウドアーキテクチャのパフォーマンスとコスト消費を管理する専門家であるため、このツールも有効な選択肢となります。ただし、統合上の問題や高いコストを伴う場合があります。

ツールの種類を問わず、クラウドモニタリングを実行する目的は共通しています。目的は、クラウド上でサービスや製品を顧客に提供する際に支障をきたす可能性がある問題をスキャンすることであり、このために、ツールは以下の動作に関するデータを提供します。

  • サイバーセキュリティ対策:サイバー攻撃の頻度が増加するなか、クラウドモニタリングサービスが、侵害の可能性を検知し、セキュリティのギャップを特定し、攻撃が発生するかなり前からネットワークを保護することが重要です。

  • エラーの検知:クラウドモニタリングサービスは、エラーの要因が人為的なものか機械的なものかにかかわらず、性能基準の維持をめざしてエラーの検知・修正を行います。その結果、エンドユーザーへの影響の回避が可能になり、売り上げと顧客維持率が向上します。

  • アジリティ:現代のテンポの速い市場では、瞬時のトラブルシューティングと迅速な製品の提供が求められています。クラウドモニタリングは、クラウドの速度に関する貴重なメトリクスとデータを提供して、Webサイトとアプリケーションを最適化します。

クラウドモニタリングツール

クラウドデプロイの健全性とパフォーマンスを追跡し測定する際に役立つクラウドモニタリングツールは数多く存在します。実際に、AWS、Azure、Google Cloud Platform などの、最も一般的なクラウドサービスプロバイダは全て、すぐに利用できる監視とログ作成ツールを提供しています。ツールは、クラウドモニタリングソリューションを提供する数多くのサードパーティベンダーの中から選択することもできます。クラウドモニタリングの種類は非常に多く、ソリューションの選択には極めて包括的な知識が必要です。多くの組織では、測定する特定のメトリクスに基づいて複数のソリューションを使用しています。

クラウドモニタリングツールを選択する際は、自動化されたリアルタイムモニタリングに加えて、追跡するデータの詳細な情報が得られるダッシュボードを備えたソリューションを探す必要があります。

一般的なクラウドモニタリングツールには次のようなものがあります。

  • Google Operations:Google Cloud Platform を使用している場合、このモニタリングソリューションはアプリケーションのパフォーマンスを追跡、測定、最適化するのに役立ちます。これは、クラウドサービスやアプリケーションの全体からログ、メトリクス、その他のデータを収集するための強力なツールスイートです。便利なダッシュボード、リアルタイムのログ分析、アラート構成を備えています。
  • Microsoft Azure Monitor:Azure インフラ、アプリケーション、ネットワークリソースの全体からメトリクスを収集して集計し、豊富なデータをログに記録できます。Azure 以外のテナントやサブスクリプションでも機能します。また、Azure Logic Apps やAzure Event Hubs との組み合わせが可能な分析ツールや機械学習ツールも備えています。
  • Amazon CloudWatch:AWS クラウドのデプロイをモニタリングして、クラウドとオンプレミスの両方にあるアプリケーションとリソースを可視化します。70 を超える AWS サービスと統合されており、データのログ記録やメトリクスデータを容易に収集、測定できます。このツールを使用すると、さまざまなトリガーアクションやワークフローを自動化することもできます。
  • Nutanix クラウドインフラ(NCI) Nutanix クラウドマネージャー(NCM):いずれも、クラウドとオンプレミスのインフラの健全性を常に監視するためのさまざまなクラウドモニタリングツールを提供します。データフロー、潜在的な侵害や脆弱性、全体的なパフォーマンス、その他の多くのメトリクスを詳細に可視化します。最適化タスクを自動化して、クラウドの運用とパフォーマンスを最大限に活用することもできます。

クラウドの種類別クラウドモニタリングの役割とは?

クラウドアーキテクチャの種類を問わず、クラウドモニタリングサービスが重要とされるなか、その役割を実行する方法はサービスごとに異なります。

プライベートクラウドは、他のアーキテクチャと比較して、極めて容易に監視できます。オンプレミスインフラの制御と可視性により、システムとソフトウェアへのアクセスを維持します。プライベートクラウドモデルも優れた制御が可能ですが、クラウドモニタリングは、ワークロードとネットワークパフォーマンスを監視し、クラウドアーキテクトに対してクラウドプロセスの構築と変更に必要な情報を提供するという、重要な役割を果たします。

パブリッククラウドは可視性がはるかに低いため、クラウドモニタリングの使用は必須です。モニタリングプロセスは簡単ではないとしても、クラウドモニタリングは、クラウドリソースの消費量とエンドユーザーエクスペリエンスに関する重要なデータを提供し、主要なメトリクス、ログ、データフローの可視性と制御を向上させます。パブリッククラウドはその可視性の低さから予想外の料金が発生することがあり、クラウドモニタリングを通じで監視することは特に重要です。

ハイブリッドクラウドアーキテクチャには独自の課題がありますが、クラウドモニタリングツールで課題を軽減することができます。クラウドデータは単一のアーキテクチャに存在するものではないため、ユーザーがパブリッククラウドまたはプライベートクラウドからデータにアクセスしようとすると、セキュリティとコンプライアンスの問題が発生します。このような場合、クラウドモニタリングは、管理者がどのデータをどのクラウドに保存し、非同期で更新するか、データをより小さく管理しやすい部分に分割するかを決定するのに役立ちます。

クラウドモニタリングのメリット

クラウドモニタリングには数え切れないほどのメリットがあります。プライベートクラウドのアーキテクチャのみを利用している企業でも、次のようなクラウドモニタリングの主なメリットを享受できます。

  • クラウドアプリケーションおよびネットワークのセキュリティ向上

  • 事業継続性計画の実装を簡素化して、反応的ではなく予防的なリスク防御を実現

  • 理想的なアプリケーションパフォーマンスの達成および維持

  • 迅速な問題報告と解決によるサービス可用性の最適化

  • 完全なアーキテクチャ可視化で予期しないクラウドコストの発生を削減

  • クラウドのアクティビティ増加に対応する容易なスケーリング

  • 複数のデバイスでの使いやすさ、クラウドの状態を常時把握

クラウドモニタリングのベストプラクティス

クラウドモニタリングサービスによるメリットを最大限に享受するためのベストプラクティスは次のとおりです。

  1. 監視対象の動作を決定する:収益に貢献する最も重要なメトリクスを選択します。

  2. レポートデータを単一のプラットフォームに統合する:複数のクラウドサービスやインフラの使用から生じる混乱や複雑さを排除します。さまざまなソースから収集したデータを 1 つのプラットフォームで表示することで、メトリクスを包括的に計算できるようにする必要があります。

  3. サブスクリプション料金とサービス料金を把握する:クラウドモニタリングサービスは使用量に応じて料金が高くなるため、より高度なサービスを選択することで、クラウド上で発生しているアクティビティの量を追跡し、コストを把握できます。

  4. 説明責任を確保する:どのユーザーがどのクラウドアプリケーションを利用しているのかを把握し、説明責任を確保します。また、ユーザーが特定のアプリケーションを利用している際に何が画面に表示されているのか把握し、応答時間、使用頻度、その他の総合的メトリクスについても監視が必要です。

  5. 適切なデータでルールを自動化する:しきい値を超過または下回る動作を特定することで、サーバーを追加または削除して一貫性のあるパフォーマンスを維持します。

  6. 監視データをアプリケーションとサービスから分離する:情報を一元管理し、関係者が容易にアクセスできるようにします。

  7. クラウドモニタリングツールの定期的なテストを常に実施する:サービスが機能しているように見えても、機能停止や侵害が発生するとモニタリングツールとしての真価が問われることになるため、ツールをテストして予期せぬ事態の発生を防止します。

関連リソース

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