第5回年次 Enterprise Cloud Index 日本レポート

日本ではハイブリッド・マルチクラウドが主流となり、ホスティングデータセンターの利用も3倍に増加


本レポートについて

5年連続となる今年も、Nutanixはグローバル企業によるクラウド導入の現状把握を目的とした委託調査を実施しました。2022年12月~2023年1月、英国の調査会社であるVanson Bourne社が、全世界のIT意思決定者1,450名を対象にクラウド導入の進展に関する調査を実施しました。回答者の属性は多岐にわたり、南北アメリカ、欧州・中東・アフリカ(EMEA)および日本を含めたアジア太平洋(APJ)地域からさまざまな業界・規模の組織が対象となりました。

本レポートは、全世界を対象とした元のレポート「5th Annual Nutanix Enterprise Cloud Index(第5回 年次エンタープライズクラウドインデックス)」を補完するもので、特に日本におけるクラウドの導入に焦点を当てています。 また、回答者の在籍組織がどのようにクラウドの導入を計画し、優先順位を定め、どんな経験を得ているかという点に着目し、他のAPJ地域や世界との比較を行っています。

主な調査結果

1.日本企業による複数のIT環境の混在利用は世界平均をやや下回る。

ECIで回答頂いた半数以上(56%)の日本企業がプライベートクラウドとパブリッククラウドの混在、複数のパブリッククラウド、オンプレミスとホストティングデータセンターの組み合わせなど、複数のIT環境を混在利用していると回答していますが、世界平均の60%をわずかに下回る結果となりました。日本のIT部門は、今後1~3年の間に混在型ITの占有率を65%にまで拡大する見通しとしていますが、これはECIによる全世界の調査結果の平均値を9%下回っています(表1)。

表1.複数IT環境の利用状況

日本

全体

現在

56%

60%

1~3年以内

65%

74%

 

表2. 日本:利用中および計画中の IT運用 モデル

現在**
1~3年以内**

オンプレミスインフラストラクチャーのみ*

13%

6%

ホスティングインフラストラクチャーのみ*

8%

26%

単一のパブリッククラウドのみ*

23%

3%

オンプレミスとホスティングインフラストラクチャーの両方

11%

6%

ハイブリッドクラウド

13%

12%

ハイブリッドマルチクラウド

29%

41%

マルチクラウドのみ*

3%

6%

*利用中または計画中のみを対象としています。
**四捨五入により、合計が100%にならない場合があります。

 

日本で最も拡大している領域は、ホスティングデータセンターインフラストラクチャーサービスです。回答者は、2026年までにこのモデルの独占的な利用を3倍以上の26%にまで拡大すると見通しています。このような計画は、過去1年間にアプリケーションを特定のインフラストラクチャーから別のインフラストラクチャーへ移動させた理由として2番目に多かった、「IT管理のアウトソーシング」という結果とも一致しています(主な調査結果 #5 参照)

しかし現在日本では、プライベートインフラストラクチャーと1つ以上のパブリッククラウドプラットフォームを組み合わせた、ハイブリッドマルチクラウドモデルが全体の29%を占めており、3年以内にこれが41%まで拡大すると見込まれています。ホスト型プライベートクラウドインフラストラクチャーや、ハイブリッドマルチクラウド、そしてやや勢いは劣るものの、マルチクラウドインフラストラクチャー(パブリッククラウドのみ)の拡大によって、オンプレミスのプライベートインフラストラクチャーに依存してきた日本企業の割合は、2026年までに約半分の6%へ減少すると見られます。

 

2.データ主権(ソブリン)と規制遵守が日本企業のITインフラ投資決定時の考慮事項。

ITインフラストラクチャーへの投資決定を行う際の最も重要な基準について質問したところ、回答は様々で(表3)、企業が属する業種や企業規模、地域、地域の規制、ビジネスや持続可能性の目標、さらに社内のIT方針などによって重要視する内容が異なっています。日本における回答で最も多いのはデータ主権(16%)と規制遵守(16%)で、続いてサイバーセキュリティ(12%)となっています。データ主権はAPJ地域全体でも大勢を占め、サイバーセキュリティと並ぶ13%になっています。表に示すように、最優先の基準としてコストを選んだ日本の回答者は存在せず、またアプリケーションやデータパフォーマンスを最大の要因として選んだ回答者もわずか2%に過ぎませんでした。

 

単一回答*

表3. インフラストラクチャーの決定要因

日本

APJ

全体

データ主権(クラウド横断的なポリシー、

デジタルシュレッディング、アクセスコントロールの回復など)

16%

13%

10%

コンプライアンスや規制遵守への懸念

16%

8%

8%

ランサムウェア、マルウェアからの防御を含むサイバーセキュリティ

12%

13%

13%

データの保護とリカバリ(DR、レプリケーション、スナップ、BUなど)

11%

10%

10%

クラウドやオンプレミスを横断して実行できる柔軟性

10%

11%

10%

既存のアプリケーションを簡単にパブリッククラウドへ移動させる能力

9%

6%

8%

データサービス(例:ファイル、ブロック、オブジェクト)

8%

8%

8%

サステナビリティ

7%

8%

7%

アプリケーションの要件

5%

6%

6%

エッジ、データセンター、パブリッククラウドへのデータの分散

4%

7%

8%

パフォーマンス

2%

6%

8%

コスト

0%

4%

5%

*四捨五入により、合計が100%にならない場合があります。

 

3.IT環境の混在利用が新たな課題を生んでおり、多様なワークロードとデータを管理する単一のプラットフォームが理想的と回答。

日本(91%)、APJ地域(95%)、全世界の回答結果(94%)におけるほぼすべての回答者が、プライベートやパブリックなど様々なインフラストラクチャーを単一のプラットフォームで管理できることが理想だとしています。混在モデルの管理上の課題に関する日本企業の回答は、APJ地域や世界の他の企業と一致していました。

様々なIT環境を管理する上での最大の課題として最も多く挙げられるのは、データ分析とオーケストレーションであり、その値は日本(64%)、APJ地域全体(51%)、ECIでの全世界の回答結果(43%)となっています(表4)。これらの要因と並んで、データストレージのコストもまた、ECIにおける全世界の回答結果で最も高い割合(43%)を占め、日本では2番目に大きな割合(47%)となっており、さらにデータの所在に対する可視性(45%)が続いています。

表4.混在型環境におけるデータ管理での最大の課題

複数回答可

日本

データ分析とオーケストレーション

64%

APJ

データ分析とオーケストレーション

51%

全体

データストレージのコスト

43%

データ分析とオーケストレーション

43%

 

混在環境では、IT部門が目に見えない対象の管理や安全確保ができないため、データの可視性の制限はすぐに問題となります。日本の回答者の81%がデータの完全な可視化が重要とする一方で、実際にそれが実現できていると回答した割合は9%に過ぎず、機能上の大きなギャップや大幅な改善の余地があることを示唆しています。

4.すべての日本企業が、過去1年間にインフラ間でアプリケーションを移動させており、その理由には変化が見られます。

今回、日本の回答者が挙げた最大の理由(表5)は、アプリケーションのより良い管理(44%)となっており、これは昨年の第4回ECI調査結果から6ポイント上昇しています。また2番目は管理のアウトソーシング(42%)となっています。昨年、システム環境間でアプリケーションを移動させたとする回答者の割合は86%でしたが、今年は100%となり、その理由として最も多かったのが、セキュリティや規制遵守の向上(41%)となっています。

下記の表で示すように、アプリケーションのより良い管理(47%)もまたAPJ地域全体で高い順位になっていますが、セキュリティの改善がさらに高い割合(50%)を示しています。

表5.過去12ヶ月にアプリケーションを移動させた理由

複数回答可

日本

APJ

全体

アプリケーションのより良い管理

44%

47%

40%

サステナビリティ目標を満たすため

39%

44%

39%

セキュリティ体制の改善または規制要件を満たすため

39%

50%

46%

クラウドネイティブサービス(例:AI/機械学習)と統合するため

37%

46%

42%

データアクセススピードの改善のため

39%

44%

41%

アプリケーションの開発をスピードアップするため

34%

36%

35%

コスト

26%

24%

21%

ディザスタ・リカバリ

28%

27%

28%

IT管理のアウトソーシング

42%

32%

32%

キャパシティに対する懸念

28%

27%

27%

エグゼクティブからの要求

31%

24%

24%

5.一貫性のない回答者のコストに対する考え方。

ECI回答者の一般的なコストに対する考え方には、一貫性がありません。日本、APJ、全世界、いずれの回答者の場合でも、コストはインフラストラクチャーに対する投資判断を行う際の最下位になっている一方で(表♯3 参照)、4分の3を超える日本の回答者が(85%)、クラウドのコスト管理が現在のITインフラストラクチャーにおける課題であるとし、APJ地域全体(86%)や世界全体(85%)と同様の傾向を示しています。各グループの約3分の1が、クラウドのコスト管理は「重大な」課題だと位置づけています。同時に、来年度のIT予算においてクラウドのコストを「非常に懸念している」と答えた日本の回答者(24%)は、APJ地域全体(30%)および全世界の回答結果(30%)と比較して、かなり少ないことが分かります。

一見矛盾しているように見える理由の1つは、企業データの価値が高まり、量が急増するに従って、データ管理やセキュリティ、データの保護やバックアップ/リカバリが重要視されるようになるからです。今やデータは現代のビジネスにおける資産や通貨の位置付けとなっており、常に最新の状態や安全性を維持しながら、いつでも事業運営や分析、収益化に向け活用できるようにしておく必要があります。さらに、インフラの総所有コスト(TCO)については、多くの要素と考慮事項が存在しており、特にパブリッククラウドのサービス、価格モデル、そして料金体系が変化し続けていることを考えれば、以前の意思決定内容で同じものを比較することには無理があります。

まとめと展望

第5回 ECI の調査結果から、プライベートデータセンター、パブリッククラウドおよびエッジロケーションを横断する形でのITインフラの混在利用が大幅に拡大していることが分かります。日本の回答企業は、マルチインフラストラクチャーの現在の利用状況や、今後3年間の導入計画において、世界の平均から若干の遅れを取っています。日本企業の成長計画は他の地域と異なり、2026年までにホスティングプライベートITインフラストラクチャーの利用を3倍以上にするという内容が含まれています。そして当然のことながら、過去1年間にアプリケーションを他のインフラストラクチャーへ移動させた最大の理由は、IT管理のアウトソーシングのためというものでした。しかし同時に、ハイブリッドマルチクラウドモデルは、日本企業の回答者の間で現在利用されている主要なモデルであり、この調査グループの3年間の計画でも引き続き優位を占めています。

ITインフラストラクチャーに対する投資の決定を行う際、日本の回答者の考慮点として一番となっているのはデータ権限と規制遵守ですが、APJ地域全体ではデータ主権とサイバーセキュリティが一番となっています。また、ECIの回答者全体では、サイバーセキュリティが最大の懸案事項となっています。

インフラストラクチャーの多様化と共に、データストレージや管理、セキュリティ、そしてサービスが重要視されるようになったことで、あらゆるIT担当者がプライベートインフラストラクチャーやパブリックインフラストラクチャーを超えたハイブリッド運用を求めるようになっています。日本からの回答者の91%を含むほぼすべての回答者が、単一の場所から多様なインフラストラクチャーを、様々な観点で監視、管理できる仕組みが求められていると述べています。このような機能が登場することで、ITチームはすべてのデータが存在する場所を可視化する統合ツールにアクセスできるようになり、アプリケーションやデータを包括的に管理すると共に、必要に応じて修正を加えながら、コストやパフォーマンス、データ保護、コンプライアンスなど、絶えず変化する要件にも対応できるようになります。