ホタルイカをはじめとした漁業が盛んな地域としての特徴を生かしながら、蜃気楼や魚津埋没林など観光資源を生かした街づくりに取り組む魚津市において、地域の教育環境の整備を行う。2016年に魚津市教育振興基本計画を策定し、「人と文化を育むまち」を基本目標に「明日を担うひとづくり」「豊かな心を育む文化とスポーツの振興」の2つを政策の中心に据え、未来を担う子供たちの育成に向けたさまざまな施策を実施している。
教育委員会
北陸街道の宿場町、そして富山湾の港町として栄えた富山県魚津市。現在ホタルイカをはじめとした漁業が盛んな地域としての特徴を生かしながら、蜃気楼や魚津埋没林など観光資源を生かした街づくりに取り組んでおり、産業振興を含めた幅広い活動を行っています。魚津市の教育を支える魚津市教育委員会では、2016年、「人と文化を育むまち」を基本目標に魚津市教育振興基本計画を策定。学校教育や生涯学習を推進する「明日を担うひとづくり」と、文化や生涯スポーツ・レクリエーションの振興を図る「豊かな心を育む文化とスポーツの振興」を政策としています。同委員会では、市内の小中学校をはじめ、博物館や図書館、給食センターなどを所管しており、50名ほどの職員がさまざまな活動を通じて魚津市の教育環境を支えています。
魚津市教育委員会は、学校教育環境の整備を重点項目の一つとして、市内小中学校において教育の情報化整備に向けた活動を推進しています。2017年2月には「魚津市教育情報化整備基本計画」を策定、無線LANをはじめとした各種ICT機器の具体的な導入計画や教育の情報化を推進するための体制、教員の校務事務軽減に向けた取り組みなどを加速させています。その実現に向けて課題となっていたのが、情報化に欠かせないサーバー環境の整備やセキュリティ対策、認証など各種基盤の整備でした。「小中学校のインフラ整備に向けて、まずは基盤となるサーバー環境を整え、教職員に役立つ情報共有基盤を整備することが求められました。同時に、将来的に計画されている無線LAN環境の整備やネットワーク分離をはじめとしたセキュリティ強化に結び付くような基盤を意識する必要がありました」と魚津市教育委員会 教育総務課 総務係 米澤祐治氏は説明します。
教育環境の情報基盤整備に向けて、基盤選定に取り掛かったのは同課 同係 主任 菊地宗哉氏でした。「実は教育現場にグループウェアを導入する計画が以前からあり、その検討段階で認証基盤を整備する必要があることや、セキュリティを強化する必要があることがわかりました。つまり、一から環境を構築する必要がありました」と当時の状況を振り返ります。そこで菊地氏が目指したのが、将来に備えて、サーバー基盤を柔軟に拡張していくことができる環境づくりでした。「何か新しいソリューションを入れるにしてもサーバーが必要ですし、文部科学省の指針としても示されているネットワーク分離などにも、今後対応しなくてはなりません。仮想環境で柔軟に運用できる仕組みを念頭に、限られた予算のなかで整備できる方法を検討しました」と菊地氏は語ります。
菊地氏の目に留まったのが、毎年の予算に応じて柔軟に仮想基盤を拡張、追加できるNutanixのEnterprise Cloud OSソフトウェアでした。「基本計画に沿って環境を整備していくと、最終的にはサーバーだけでも50台程度は設置する必要があります。その環境は単年度だけで手配するのは予算の縛りもあって難しいため、できれば柔軟に拡張していけるものがベストでした」と菊地氏。さらに物理的なスペースも限られており、従来のSANストレージを用いた3層構成の導入は難しいという状況でした。仮想化環境であり、なおかつ高い集約率を実現できる仕組みが求められていたと語ります。
もちろん、予算的にも絞った形で基盤整備を行う必要がありました。「サーバーをはじめ、ウイルス対策ソフトウェアやURLフィルタリング、WSUS(Windows Server Update Services)などのセキュリティ機能、そしてDNSやActive Directory環境、グループウェアまで含めて、限られた予算で環境を整備する必要がありました。移行作業まで含めると、かなり厳しい予算のなかで環境整備を行う必要がありました」と菊地氏。Nutanixが提供する標準バンドルのハイパーバイザーであるAHVはライセンスや保守にかかるコストを大幅に削減でき、決定要因の一つになったと語ります。さらに、教職員が休みに入る夏休みの間に稼働させることが条件だったこともあり、短期間で構築できるシンプルな構成が必要でした。「従来の3層構成で環境の調達から構築までを行うと、想定された期間で環境を整えるのは難しい。短期間での構築には、迅速かつ柔軟に構築できるNutanixが欠かせませんでした」と菊地氏。
将来的に環境整備が必要となるネットワーク分離のためのシンクライアント環境も考慮した上で、レスポンス的にも十分に耐えられることを条件に入札を実施。最終的にはNutanixがサーバー基盤として選択されました。
「これまでは外部委託せざるを得ませんでしたが、今は私のように専門知識がなくても運用管理できるというのはとても大きい。管理ツールのPrismのコンソールは非常に見やすく、画面内にそれぞれ機能が区分されているため、トップ画面だけを見れば状況がすぐに把握できます。ボタン1つで起動するといった使いやすさはこれまで体感したことのない操作感です。」
今回のプロジェクトは、2017年6月に入札が行われ、8月末にはすべての環境整備が完了、わずか2か月半程度という短期間で本稼働を実現しました。「セキュリティ環境の整備やグループウェアの設定、教育も含めて、すべて納期通りに仕上げることができました。もちろんシステムインテグレーターの尽力のおかげでもありますが、従来のSANストレージを中心とした3層構成ではこれほどの短期間で構築することはできなかったでしょう。構成がシンプルで仮想サーバーの払い出しも素早くできるNutanixがあったからこそ、達成できました」と菊地氏は評価します。
現在は、グループウェアをはじめ、ウイルス対策やURLフィルタリング、DNSサーバー、ID管理システム、WSUSなど各種環境がNutanixのNXシリーズ上に展開されており、教職員含めて300名ほどの規模で運用されています。ハイパーバイザーにはAHVを採用し、大きなトラブルもなく安定稼働を続けています。
日々の運用管理は菊地氏が自身で手掛けており、普段から管理ツールのPrismを操作する機会も多々あると説明します。「これまではハードやソフトの複雑さから外部委託せざるを得ませんでしたが、今は私のように専門知識がなくても使えるのはとても大きい。Prismのコンソールは非常に見やすく、画面内にそれぞれ機能が区分されているため、トップ画面だけを見れば状況をすぐに把握できます。『ワンクリックで操作できる』といった使いやすさはこれまで体感したことのない操作感です」と菊地氏。学校など教育現場から問い合わせがあった場合でも、Nutanix Prismで可視化された稼働状況を一目で確認できるため原因特定も迅速だと語ります。サーバー基盤は現在も安定して稼働を続けており「課題になることを見つけるほうが大変」と評価しています。安定稼働に貢献しているAHVについては、「Prismから簡単に設定・運用することができ、シンプルな機能で大変満足しています。他社製のハイパーバイザーは確かに細かい設定が可能ですが、日々の運用ではそこまで求めているわけではありません。」と菊地氏は語ります。
今回の情報基盤を整備したことでの一番の効果は、やはり柔軟な拡張が可能な点です。「すでに来年度以降にはシンクライアント環境の整備も視野に入れていますし、校務系と学習系に分けてサーバー環境を構築していくことも必要になってきます。しかも、学習系には授業支援システムなどの導入も必要なため、それらを一括に導入するだけの予算確保は正直難しいのが実情です。しかし、ノードを追加するだけでCPUやメモリ、ストレージといった各リソースが簡単に増設できるNutanixであれば、計画に沿ってICT環境を毎年拡張していくことができます。3層構成ではこの拡張性の実現は困難だったでしょう。」と菊地氏は評価しています。
現在は、教育情報化整備基本計画に向けた基盤構築が終わって運用に入っている状況にあり、これからタブレットや電子黒板など教育環境を整えていく段階にあると語ります。サーバーについては必要に応じてノードを追加していくことで柔軟に環境構築できると期待しています。「国の方針もしっかり見ていきながら、必要な環境を整えていきます。また、基本計画については教育に注力する市長の意向もあり、5年計画が3年ほどに前倒しされる方針です。優先すべきはもちろん子供たちの環境ですが、校務の負担も減らしていけるよう、教員の環境づくりもしっかりと意識しながら進めていきたい」と菊地氏は語ります。
来期以降には授業支援のシステムをはじめ、教職員の働き方改革にも役立つようBYODの環境を構築することも検討しており、業務基盤としてさらに環境整備を進めていく考えです。それらの基盤としてもNutanixを継続的に活用していきたいと菊地氏に語っていただきました。