病院や診療所など医療機関を数多く展開し ている徳洲会グループにおけるその情報シス テム部門として2009年に設立。電子カルテ やPACS、人事給与システム、医薬品・資材受 発注システムなどをグループ内に展開。アプリ ケーションのみならず、サーバインフラやネット ワークを含めたインフラの提供はもちろん、 グループ内の病院に蓄積された1000万人を 超える医療ビックデータを解析、活用するた めの基盤としての病院運営管理ツール整備 も行っている。
医療業界
1973年に徳田病院を開設したのを皮切りに、現在は全国に71病院をはじめ、診療所や介護老人保健 施設、介護・福祉・施設事業所など約340施設を全国に展開している徳洲会グループ。徳洲会インフォ メーションシステム株式会社は、その情報システム部門として2009年に設立され、グループ内の病院 や診療所に対して電子カルテや医療用画像管理システム(PACS)、人事給与システム、医薬品・資材 受発注システムなどを導入・運用しています。アプリケーションのみならず、サーバーやネットワークを 含めたインフラの提供はもちろん、グループ内の病院に蓄積された1,000万人を超える医療ビックデータ を解析、活用する基盤として病院運営管理ツール、いわゆるBI環境の整備も行っており、経営分析や 臨床指標、医療安全、業務量など医療現場の改善につながる各種情報提供にも積極的に取り組んで います。
同社では、グループ内の病院に業務システムを導入する際、システムごとにサーバー基盤を構築して いました。「業務サーバーが乱立している状態のため、ハードウェアの一元管理が難しく、効率的に管 理する手法が求められていました」と代表取締役社長 尾﨑 勝彦氏は語っています。また、ミッション クリティカルな運用が求められる電子カルテシステムは、冗長化していましたが、万一の障害時には 手動での切り替えを余儀なくされており、30分から1時間程度のダウンタイムが生じる可能性があり ました。「電子カルテシステムは病院業務において止めてはいけないシステムの1つ。ダウンタイムを極力 短縮するシステム環境が求められてきたのです」と取締役 導入管理部 部長 髙橋 則之氏は説明します。
物理サーバー上に仮想環境を構築することで可用性を担保していましたが、物理サーバー環境の更改 のたび、全ての環境を刷新しなければなりません。基盤の入れ替えに関しても課題が顕在化していた のです。「電子カルテの仕組みだけでなく、部門システムも含めて異なるタイミングでさまざまなサー バーを更改する必要があります。これが全国70もの病院で順次行われており、毎年何かしらの更改 が発生することに。結果として更新作業に多くの工数がかかってしまう状況でした」と髙橋氏。サーバー の入れ替えも負担なく柔軟に実施できる基盤への刷新が求められていました。
そこで注目したのが、オンプレミス環境でもクラウドのような拡張性を持ち、複雑な3層構成から脱却 できるハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)でした。「とある海外の展示会でその概念 を知り、複数の業務アプリケーションを統合管理できる仮想化環境を構築できないか、電子カルテや サーバーそのものを提供してきたパートナー企業に相談しました」と尾﨑氏は当時を振り返ります。 そこで複数の製品が候補に挙がり、最終的に同社の目に留まったのがNutanixのEnterprise Cloud OSでした。「ハードウェア更改の際、既存環境を生かしたまま新機種の導入が容易な点を高く 評価しました」と尾﨑氏。Nutanixであれば、ハードウェアの保守が切れてもシステムをそのまま使い 続けることができ、故障したら廃棄し、新しいハードウェアを追加して継続利用できるという更改サイ クルが実現できる点に大きな魅力を感じたと語ります。
また、Nutanix選定の要因の一つになったのが、稼働実績でした。「Nutanixはミッションクリティカル な環境での稼働実績が多く、安心材料の1つとして評価しました」と尾﨑氏は語ります。実は、同社の サーバー環境を長年支えているパートナー企業からも、Nutanixが提案されました。「ベンダーのハード ウェアに依存せずにソフトウェアを展開できるため、Nutanixをソフトウェア単体で導入する形を提案 いただきました。そうすることで、既存ベンダーからハードウェアだけを調達し続けることができます。 最適なコストパフォーマンスで必要な機器が調達できる環境が整備できると考えたのです」と尾﨑氏 は語ります。
電子カルテシステムを提供するパートナー企業の協力のもと、複数の製品で安定稼働の検証を実施 したところ、Nutanixの組み込みハイパーバイザーであるNutanix AHVで安定した性能で運用できる ことを確認できました。電子カルテのデータは大きなサイズになるため、検証の過程で重複排除や圧 縮についても実データを用いて確認し、Nutanix AHVを使った圧縮が想定以上に効果的だった点を 高く評価しました。「ハードウェアで圧縮する他社製品とも比較しましたが、それは3割程度の圧縮率で した。Nutanix AHVではおよそ半分ぐらいまで圧縮できることが検証で明らかになったのです」。
運用管理の面でも、Nutanixが提供する管理ツールであるPrismの使い勝手の良さが高く評価され ました。物理サーバー領域も含めて全てPrismで一元管理でき、仮想マシンの作成や新たなハードウェア の追加も数クリックだけ。作業負荷を減らしながらダウンタイムを最小限にできる保守性の高さを評 価した結果、NutanixのソフトウェアであるEnterprise Cloud OSが電子カルテシステムの基盤とし て採用されました。
現在は、グループ内でも大規模な病院である千葉西総合病院および中部徳洲会病院(沖縄)、 八尾徳洲会総合病院の3施設で利用されている電子カルテシステムの基盤は、従来のDell XCでは なく、Dell EMC PowerEdgeが導入され、その上にNutanixのソフトウェアライセンスが別調達 された新たな提供形態であるDell XC Coreで構築が行われております。これまでと同様にDell EMC PowerEdge上にNutanixのEnterprise Cloud OSが稼働しており、この基盤上には、 ドメインサーバーやファイルサーバー、DBとしてのマイクロソフト社のSQLサーバー、Webサー バーなど電子カルテシステムに必要な環境が仮想マシンとして稼働しており、検証環境やアンチ ウイルスの配信サーバーも含めてNutanix AHV上に展開しています。
今回Nutanixをベースに基盤を構築したことで、既存環境を生かしたまま新しいハードウェアを 導入できる継続性の面で、現場からの期待も高いと髙橋氏は語ります。「モデルチェンジがさほど 行われない一般的な医療機器の場合、10年を超えて使い続けるケースも少なくなく、サーバーだ け数年単位で入れ替えることに現場の理解が得にくい場面も。しかし今回の環境によって、数年 ごとに莫大な費用をかけることなく追加分の費用だけで環境が刷新できるため、現場にも納得し てもらいやすい環境を整えることができました」。また、Nutanixが提供するソフトウェアはマルチ ベンダー対応であるがゆえに、コストパフォーマンスの高いハードウェアへの入れ替えも容易です。 「特定のベンダーに依存しないことで、今後もコストパフォーマンスを意識しながら柔軟な環境 づくりができるのもNutanixだからこそ」と尾﨑氏は評価します。
今後については、3病院以外の展開も計画されており、順次新たな病院への横展開導入を検討し ています。ただし、先行して導入した3病院は規模が大きいものの、グループ内には規模の小さな 病院もあり、小規模施設に適した構成が実現できるようになることを期待しています。「小規模な 病院の展開については、電子カルテへのアクセスもさほど多くありません。レスポンス面でも運用 上支障がないところについては、クラウドを利用するという可能性も十分考えられます」と尾﨑氏 は説明します。データ量が多くアクセス頻度も高い病院はオンプレミスでのEnterprise Cloud OSを、小さい拠点ではパブリックラウドを利用するなど、ハイブリットクラウド環境での基盤づく りについても今後検討すると、尾﨑氏は続けて語ります。
また、現状は電子カルテシステムをNutanix AHV上に展開していますが、周辺業務含めたその ほかの業務アプリケーションも同基盤の上で動かしていくことを検討しています。「最終的には、 調剤や心電図の仕組みなど、業務に付随するアプリケーションをこの基盤にどんどん乗せていき たいと考えています。パッケージソフトウェアだけでなく、我々独自で開発したシステムもあるた め、Nutanixの基盤に乗せて万一の障害時には自動的に切り替えできるなど、障害対策としても Enterprise Cloud OS が生かせるはず」と髙橋氏は締めくくります。