「まず、Nutanix Cloud Platformに移行して、トラブルは起こっていません。安全に移行できた上に機能的にもアップグレードされたと感じています。コスト面でも従来基盤でのリプレースと比較し削減効果を実感できました。もし、他の団体様で仮想基盤の候補としてNutanixを検討する際に、異なる技術を用いた仮想基盤からの移行に不安を持たれるかと思いますが、それほど悩む心配はないのではないかと思います」
戸田市が本格的なITインフラ基盤の整備に乗り出したのは8年前の2017年のことでした。当時は業務主管課がそれぞれ独自に基盤とアプリケーションを導入・運用していたため、効率的なITインフラの実現を目指して、これらを一つの統合基盤に集約し管理・運用したいと考えました。しかし、住民情報系システムと職員利用の閉域網LGWAN(Local Government Wide Area Network:総合行政ネットワーク)は物理的に分割されており、理想的な統合は実現できていませんでした。
そうした中、全業務課への調査においても、システム停止に対する不安を訴える声が増加していました。そのため、次期基盤においては「ノンストップで安定したシステム運用が可能な基盤構築が最優先」(島田氏)と考え、システムトラブルや様々な災害を想定した事業継続性の強化も目指しました。
また、戸田市では日々のデータバックアップに課題を抱えていました。データ容量の増大に伴いバックアップ取得に時間がかかりその結果、住民情報システムの稼働トラブルなど運用に支障をきたしていました。そのため、バックアップ時間の短縮は急務となっていました。
戸田市が仮想基盤をNutanix Cloud Platformに移行開始したのは2025年1月~3月のこと。これに先駆け、2024年7月から基盤構築作業に入りました。移行と同時に、従来からの課題であった住民情報系システムと行政事務系システムの統合を目指し、リソースの効率的な利用を目指しました。自治体特有の三層分離構成については論理分割によって実現し、インターネット系については今回の移行では別サーバーのまま残しましたが、2025年内には統合を計画しています。
導入段階では、Nutanix Collectorによって旧基盤の利用状況を調査した上で、最適な構成でシステムを構築することができ、コスト最適化を実現しました。加えて、元々サーバー自体の死活監視は実施していたものの、CPUやメモリー、ストレージなどリソース別の監視が不十分だったため、今回の基盤統合と同時に充実した監視環境を整えることで、安定稼働を支援する機能も強化させることができました。
課題だったバックアップについては、従来LTOを利用していた2次バックアップ先を政府系のガバメントクラウドに移行しました。また、Nutanixの標準機能を最大限に活かしてシンプルなBCP環境を実現できたのも特徴の1つで、1次バックアップ取得先のクラスタ上でも最低限のシステムの動作が可能なレベルのリソースを確保しています。このような構成にすることでBCPという観点で仮想マシンが1次バックアップ取得先のクラスタ上でそのまま稼働可能になりました。今回のリプレースで安定したBCP環境から政府クラウド上でのデータ保管までをハイブリッド環境で実装できたことが特徴となります。
市の行政全体から見た際に、Nutanix Cloud Platformへの移行によってコスト削減という観点だけでなく、安定して市民サービスを提供することができる安心・安全なインフラ環境を導入することができたと言います。
さらに、業務システムの処理性能が向上したとの報告も受けており、業務担当者から「夜間処理時間がほぼ半分になった」との声もあるとのこと。バックアップにかかる時間も、数分へと短時間化でき、バックアップ自体の失敗も生じないと言います。運用の面でも、戸田市の環境を熟知した導入パートナー様の信頼できるサポートに「安心して任せることができる」(島田氏)と実績を評価しています。
基盤移行時には、特に「ダウンタイムの短さに驚いた」(島田氏)と言います。業務終了時(定時)から業務システムを止めて更新するまでに1時間程度。その後、業務担当者の動作確認を含めて4時間もかからずに新基盤での稼働が可能になりました。担当課の負担も軽く、大きなトラブルもなくスムーズな移行が実現できたことに感心しています。稼働後も、新たに構築した監視環境によって、直接担当課の業務ベンダーに通知が届くようになり、障害発生時もチームとして迅速に対応できる体制を整えることができました。
戸田市は、すでに統合した住民情報系システムと行政事務系システムに加えて、今年中にインターネット接続系をNutanix Cloud Platform上に移行させて統合する計画です。同時に将来のクラウドサービス利用との整合性を考えて、自治体の三層分離構成の中でもいわゆる“ローカルブレイクアウト(LGWAN接続系から直接クラウドサービスに接続する方式)”を実現して利便性を上げる取り組みを進めています。統合によって共通のリソースを活用できることに加えて、新規構築ではなく増設・拡張となるのでコスト抑制にも効果を期待しています。
クラウド利用に関しては、基幹系ではガバメントクラウドの標準化対応を進めます。また、AWS等パブリッククラウドを利用するハイブリッドマルチクラウド運用も「活用を視野に入れて検討する」(島田氏)と言います。そのほか、ノーコードツールやAI-OCR、RPAなど業務ツールの導入に取り組み、さらに生成AIによるチャットボットを住民サービス向上の観点から活用したり、内部事務にも利用して業務効率を向上させる施策も検討しています。Nutanix Enterprise AI (NAI)がその一助となる可能性があると見ています。
10/25