倉敷中央病院、電子カルテシステムをNutanix Cloud Platformへ移行、業務システムでの運用実績と安定性に高評価

大規模共通基盤で地域医療エコシステムの効率的運用を目指す

課題

  • 医師の働き方改革に伴う人員不足や病院経営の負担を軽減するDX推進
  • 医療現場の基軸となる電子カルテシステムと業務システムのノンストップ安定稼働
  • ゼロトラストネットワークを導入した院内インフラのセキュリティ強化

導入によるビジネスのメリット

  • システム基盤の安定化による運用負荷軽減により、人的リソースを前向きな施策に活用
  • DRを含めた安定的な基盤運用によって地域医療システムの展開と拡充が可能に
  • 病院経営の継続を中断することなく電子カルテシステムをスムーズに更新

「電子カルテシステムの更新時に大なり小なりトラブルが発生するのは、これまで当たり前のことでした。ところが、Nutanix Cloud Platformに基盤を替えて初めて更新を行ったところ、利用者の誰もが気づかないくらいに何も起こりませんでした。電子カルテの更新作業が6時間で済んだうえに、更新自体が話題に上らないのは逆に凄いことです」

「サーバー性能が足りなくなれば単に台数を増やすだけで環境を拡張できるのは大きなメリットです。特に、NAS用途として導入しているNutanix Unified Storage(NUS)に組み込まれているランサムウェアによる不正暗号化の検知とブロック機能にも恩恵を感じています。さらにNutanix Moveを使えば、シンプルな操作でサーバー移行が可能ですし、レポーティングなど、システム運用管理部門にとって大変助かる機能がいろいろ揃っています」

背景&課題

2024年4月より、課題となっていた医師の長時間労働への対策となる働き方改革が施行されたことでチーム医療体制が重視されると同時に、RPAなどを含む医療DXが大きく加速しました。少子高齢化やアンバランスな診療報酬制度、人手不足と人件費の高騰などによる病院経営の逼迫が、基盤の仮想化などインフラの投資効率を高めるマインドを引き起こしています。ランサムウェアによる重大被害の拡大や電子カルテの普及、地域医療のあり方の再考など、病院を取り巻く環境は激変しています。

そうした中、倉敷という地にあって1000床を超える規模を有する倉敷中央病院は、1970年から本格的に病院業務のシステム化に着手し、当時、経営立て直しの一環として全病院を挙げてIT化を推進しました。1972年には国内の病院に先駆けメインフレームを導入し、1977年には情報化促進に寄与した功績で病院では初めて、通産大臣表彰を受けています。早くから電子カルテシステムをインターネットに接続して利用者の利便性を図りつつ、「他病院をモデルとせず、むしろ一般企業を参考に」(情報システム部 部長の藤川敏行氏)ゼロトラスト志向でセキュリティを保つ先進的な取り組みを進めてきました。

ソリューション

倉敷中央病院は2025年3月に、2003年から利用を開始した電子カルテシステムを、それまで部門システム向け基盤として運用していたNutanix Cloud Platform上に移行しました。部門システムとは、電子カルテシステムから指示によって、調剤や検体検査、給食などの各部門の業務を効率化するためのシステムになります。現在は、電子カルテシステムを含めて250~260台の仮想サーバー上に、60~70のアプリケーションを稼働しています。今後、「Nutanix環境上で動くサーバーは、最終的に300台程度の規模になる」(情報システム部 主任部員の前田貴之氏)と見ています。

仮想基盤はもともと他社製品で利用していましたが、機能的に不満足な点や不安定で障害を起こすことも多く、改善の手始めとして、2021年に部門システム基盤をNutanix環境へ移行しました。それまでは「年に1~2回、原因不明の大きなシステムダウンが発生し、60~70のシステムが一気に止まっていました」(前田氏)。部門サーバー基盤のNutanix Cloud Platformへの移行時にも既存基盤が突如トラブルを起こしたため、段階的な移行予定を急きょ変更し60~70台のサーバーを一気に移行させましたが、1日もかからず完了できました。移行後は「特にトラブルらしいトラブルはなく、サービスも止まりません」(同氏)。

また、電子カルテシステムとその仮想基盤は、一般的に電子カルテベンダーが習熟している基盤で運用するのが常ですが、今回、倉敷中央病院は運用の安定性を求めて、あえて従来基盤と異なるNutanix Cloud Platformを選択しました。理由は、「すでに部門システムで数年の運用実績があり、その安定性や運用管理の容易さなどの実体験上、信頼を置いていた」(藤川氏)ため。このような実績と体験から、電子カルテ基盤においてもNutanix選定に至り、以下に述べるような想定以上のスムーズな移行体験まで得ることができました。

導入効果

実際に電子カルテシステムをNutanix Cloud Platformに移行した際に、「トラブルの無さと移行の容易さに驚いた」と藤川氏は感心します。「電子カルテの更新は通常、ユーザーの現場を含めて大騒ぎになるのが常。それが、誰も移行に気がつかないほど平和でした」(同氏)。倉敷中央病院と同規模(1000床以上)の病院の場合、一般的に長時間診療を止めて更新するような重作業となりますが、わずか6時間で完了したのは病院の経営上にもプラスのインパクトがあったと見ています。

加えて、アプリケーションや機器のアップデート作業の負荷も大幅に軽減されました。医療情報システムの安全管理に関するガイドラインでも求められている通り、セキュリティ観点からバージョンアップ作業による各機器、ソフトウェアのバージョンの最新化が必要です。3Tier構成時代には、サーバーのバージョンアップにもストレージやネットワーク機器のバージョンアップも含め数か月単位の計画が必要だったのが、「Nutanixのソフトウェアならばほんの数クリックで完了できるし、何か問題が起こる前にプリチェック機能による事前チェックアラートが出る」(前田氏)と操作のシンプルさと安心感を強調します。現在、ファイルサーバーの更新に着手していますが、これも「機器の増設・交換を済ませば容易にリソースが準備でき、あとはMOVEで移行作業を簡素化できる」(同氏)と言います。

倉敷中央病院では、不慮の事故・災害対策として外部データセンターにおいてDRサイトを構築しています。病院の電力喪失や物理ダメージが発生した際にも、データセンターにおいて業務を継続できる体制を整えており、「こうした機能を安価で短時間に構築できるのもNutanixのメリット」(藤川氏)と見ています。日々の運用においても、Prismによるツール管理の統合と簡単な操作感が運用管理の負荷を軽減しており、さらに経験豊富なエンジニアが病院の立場に立ってサポートしてくれる点にもメリットを感じています。

今後の展開

倉敷中央病院では、病院が立地する地域全体を一つの大きなエコシステムと見立てるような「地域医療エコシステム」の形成を目指して、環境構築の中心的な役割を担うことを自認しています。倉敷には、病気や怪我など発生直後の急性期を担当する病院が2院(倉敷中央病院と川崎医科大学附属病院)あり、一方でリハビリテーションのような回復期を担う病院やクリニックが多数存在しています。1つの病院が患者の全フェーズを担うのではなく、病状フェーズに応じてそれぞれの分野を得意とする病院が担当する連携を考えています。

すでに医療画像管理システム(PACS)の地域共同利用が開始されており、院内サーバーおよび院外のデータセンターにレントゲンやCT、MRI、超音波画像を保存し、共同利用参加病院間で共有できる仕組みを構築中です。地域で大規模基盤を集約し、地域レベルでリソースを共有・有効活用することで無駄な投資を避ける方針で進めています。PACSの先には電子カルテの共同利用も検討しており、Nutanix Cloud Platform上に設けた地域連携用ストレージを、大規模な閉域網を通じて地域で共有する構想も出ています。

10/25