Nutanix Cloud Platformを活用して、手術部支援システムや重症部門支援システムなど14システムを仮想化
医療業界
「中長期的には病院システムのパブリッククラウド移行を視野に入れており、あらかじめ仮想化しておくことで将来のクラウド移行もスムーズに進むと考えています」
近畿大学病院では、合わせて約60の医療系システムが稼働しており、これらを医学部・病院運営本部 ITグループ情報システム課の9名のメンバーが、外部ベンダーのサポートを得ながら企画・構築・運用しています。同院は現在、医学部・病院システムの移転計画および移転後のシステム企画・設計に取り組んでいますが、病院情報システム(HIS)において「既存システム環境の整理」という課題を抱えていました。
医学部・病院運営本部 ITグループ 情報システム課の布江田 隆允氏は、「これまで各部門で個別にシステムを導入していたため、さまざまな用途でたくさんの物理サーバが散在していました。移転を見据え、既存のシステム環境を整理・集約しないと移転時の手間やコストがかさみ、移転後のシステム設計も煩雑になってしまうと考えていました」と語ります。
課題解決のために同院が目をつけたのが、Nutanixのハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)でした。移転を控え、不確定な要素も多い状況で集約を迅速かつ無駄なく進めるためには、従来の3層構成ではなく、拡張性の高いNutanix Cloud Platformが最適と判断しました。
布江田氏は「HCIはリソース量を柔軟に設定できるため、システムリソースを効率的に活用できます。まず『スモールスタート』で一部の部門システムを集約し、その後必要に応じて段階的に拡張し、ソフトウェアとハードウェアの分離調達を実現することで、可用性の向上と保守費用の削減ができると考えました」と述べています。
Nutanixの導入に合わせ、手術部支援システムや重症部門支援システム(ICU)を含む14のシステムを統合しました。
さらに、布江田氏はNutanix Cloud Platformの提案を行った兼松エレクトロニクス株式会社(KEL)が「過去に導入支援されたほかの大学病院の事例は当院のシステム構成と共通点が多く、HCIソリューションに関するKELの優れた実績や知見が最終的な決め手の1つになりました。保守についても丁寧に対応していただいているのでとても助っています」と語ります。
Nutanixの導入効果について、布江田氏は「これまで運用してきた部門システムの多くは、リソースを十分に使いきれずコストパフォーマンスが悪かったのですが、Nutanixにより効率的に運用できるようになりました」と語っています。
これまでは院内に散在する物理サーバの稼働状況を個別にチェックする必要がありましたが、統合管理ツールNutanix Prism上ですべての仮想マシンの稼働状況を一元的に管理できるようになったため、管理効率が大幅に向上しました。「動きがおかしいという問い合わせがあった際もNutanixの一画面を見るだけで、その他のシステムに波及していないかまで確認ができます。Nutanixは、トラブル時により効果を発揮してくれると感じています」と布江田氏は説明します。
さらに、布江田氏は「Nutanix導入後は、各アプリケーションに提供する仮想マシンを払い出すだけで、すぐに移行・構築作業を始められます。以前はシステムを刷新するために、物理サーバを調達してセットアップ作業を行う必要がありましたが、今は短期間かつ自前でアプリケーション環境を構築できるようになりました」と語ります。
「これまでサーバごとに用意していたバックアップ機器やストレージ、UPSなども集約できるようになり、それらの設置に伴う電源工事やネットワーク工事も必要なく、大幅にコストを削減できました。特にインフラ工事にまつわるコスト削減効果は、実際に導入してみて初めて気付いたメリットでした」と布江田氏は話します。
当初予想した以上にNutanix Cloud Platformによる統合の効果が得られているため、眼科部門システムや薬剤部門システムなど大規模システムの統合に向けて、Nutanix環境のさらなる拡張を予定しています。また、その他の周辺システムや、大学・病院の移転に伴い新たに構築するADサーバやDHCPサーバ、認証サーバなどの基盤機能についても、Nutanix上に統合していく計画です。
「中長期的には病院情報システムのパブリッククラウド移行も視野に入れており、あらかじめHCIで仮想化しておくことで、将来のクラウド移行もスムーズに進むと考えています。スマートフォン等を用いた患者サービスや5Gなどを活用した遠隔診療モデル、AIを用いた臨床意思決定支援システム(CDS)、ビッグデータの教育や医療への活用など、医学生や医療従事者、患者の方々が広く恩恵を受けられる仕組みをITで実現したいと考えています」と布江田氏は今後について語ってくださいました。