第 8 回年次 Nutanix Enterprise Cloud Index(ECI)から読み解く、AI 対応インフラ戦略のポイント
執筆者:Lee Caswell
AI はあらゆるビジネスに変革をもたらしています。最近では、「AI をいかに迅速に導入できるか」が優位性を左右するカギという共通の認識が定着しつつあります。しかし、真の優位性を築くには、コスト、データ主権、ハードウェア、ソフトウェアなどの課題をどのように解決できるかが極めて重要です。
2026 年版 Nutanix Enterprise Cloud Index(ECI レポート)1は、AI 導入の加速が企業の IT 環境に与える影響を示しており、その傾向はデータにも明確に表れています。IT リーダーの 85% が AI によってコンテナ化が加速していると回答する一方で、82% は自社のインフラが AI ワークロードに十分対応できていないとしています。
AI 導入のスピードと、インフラや体制の準備状況とのギャップが、企業の競争優位を左右しています。
AI の導入は単なるワークロードの追加ではなく、自社のプラットフォーム全体の能力や運用体制が試される挑戦であることが、新たな現実となっています。
従来、ハードウェアの選定は長期的な意思決定でした。Intel や AMD に標準化し、メモリ構成を決め、Dell や Lenovo からサーバーを購入して、予測可能なライフサイクルで運用するのが一般的でした。
しかし、AI はこの常識を覆しています。
新しい GPU、アクセラレータ、メモリ技術、サーバー設計は、ほとんどの組織が評価するよりも前に次々に登場しています。
ECI のデータも、この緊急性を裏付けています。IT リーダーの 82% が、自社のオンプレミスのインフラは AI ワークロードをサポートする準備が十分に整っていないと回答しており、特に医療・ヘルスケアなどの業界ではその割合がさらに高くなっています。
今年に入ってから、多くのお客さまから次のような共通の質問をいただきます。
私の回答はいつも同じです。「ハードウェアの変化に対応できるプラットフォームが必要です。」
適切な基盤を選択すれば、環境を再構築することなく、業界のニーズに合わせて最新の機能を活用できます。このような柔軟性は、スタックの最下層でますます不可欠になっています。
進化が加速しているのはハードウェアだけではありません。AI を取り巻くソフトウェアエコシステムは、さらに高速に進化しています。
企業の現場で私が経験しているのは、現在導入している LLM が、わずか 6か月後には依存するモデルではなくなっているという状況です。多くのモデルはコンテナ上で実行されている一方で、それ以外の環境は依然として VM ベースのままです。また、フレームワークの更新や依存関係の変化、GPU の要件の変更も頻繁に発生します。
こうした進化は、運用上の新たな課題をもたらします。
環境が分断されることなく、新しい AI ソフトウェアを導入するにはどうしたらよいでしょうか?
ECI レポートは、この課題がなぜ重要なのかを示しています。回答者の 85% が、AI がコンテナ導入を加速させていると回答しており、83% が既にコンテナで新しいアプリケーションを構築していると回答しています。これは、コンテナが、AI ワークロードに必要な変化の速いソフトウェアの依存関係をパッケージ化できるためです。
新しいモデルを導入するたびに、新しいチームやスキルセットが必要になるとしたら、環境は時間の経過とともに管理が困難になります。私はよくこれを「AI スイッチ」を切り替えるようなものだと表現します。スイッチをオンにした瞬間から、これまでとは異なる種類のワークロードを運用することになり、その変化に対応できるかどうかはプラットフォーム次第です。
ハードウェアやソフトウェアの進化に対応できたとしても、データ主権は、避けて通れないもう一つの重要な要素です。
お客さまが知りたいのは次のようなことです。
データ主権は単なるコンプライアンスの問題ではありません。企業の信頼性やコストの予測可能性に直結し、管理外のデータでトレーニングされたモデルを使用するシャドー AI の拡大を防ぐうえでも重要です。
ECI レポートは、「IT エグゼクティブの大半(87%)が、公式な管理・監督の外で AI ツールや AI エージェントを使用することは企業にリスクをもたらすと考えている」ことを明らかにしています。
データ主権は今や企業の最優先事項となっています。IT リーダーの 80% が、データ主権はインフラの意思決定においてデータ主権を優先度が高い要素、または必ず考慮すべき要素だと回答しています。
「AI を制御するには、まずデータを制御する必要がある。」
私は、このことはきわめて重要だと考えています。
分散型のソブリンクラウドアーキテクチャが、今後の有力なアプローチとして注目されています。このアーキテクチャにより、組織はデータをローカルに保持し、ポリシーを適用し、環境間の一貫性を維持することができます。しかし、機能するには、基盤となるプラットフォームがどの環境でも同じように動作する必要があります。
そのような一貫性がなければ、データ主権の実現は不可能です。
今回の ECI レポートでは、シャドー AI がいかに拡大しているかという事実が明らかになっています。IT リーダーの 79% が、IT 部門以外のスタッフによる AI アプリケーション/AI エージェントの導入が発生していると回答しています。
シャドー AI の拡大は、無責任な行動が引き起こしているわけではありません。むしろ、ビジネス部門が求める AI 導入のスピードに対し、IT 部門による安全なインフラ提供が追いついていないことが要因です。
さらに、この状況を悪化させているのがサイロ化です。ECI レポートによると、82% のエグゼクティブが「事業部門と IT 部門のサイロ化が技術イニシアチブの効果的な実行を困難にしている」と回答しています。
企業内の各部門の連携が取れていない場合、エンタープライズ AI の導入は断片化し、リスクも高まります。
こうしたリスクを軽減するのが、一貫性のある統合プラットフォームです。統合プラットフォームにより、IT 部門を介さずに、正式に承認され、ガバナンスのもとで管理された方法でイノベーションを進めることができるようになります。
もうひとつ、十分に注目されていない要因があります。私の試算では、これまで企業はパッチ適用、アップグレード、トラブルシューティングなどのメンテナンスに、全体の 60〜80% の時間を費やしてきました。これは、新たなアプリケーションの構築や AI 機能の展開に当てることができる時間です。
AI の時代では、この失われる時間のコストがさらに大きくなります。
レガシーインフラの維持に費やす 1時間ごとに、次のような取り組みに使えるはずの時間が失われます。
AI の世界ではスピードが重要です。しかし、メンテナンスはそのスピードを鈍らせます。
運用維持に費やす時間をイノベーションにシフトできる企業は、より迅速に前進できます。できない企業は、後れを取ることになるでしょう。
私の見解は極めてシンプルです。AI の進化はあまりにも速く、従来の「静的なインフラ」では対応できません。サイロ化した部門、絶え間ない変化を念頭において設計されていないアーキテクチャでも同じことがいえます。
今後の優位性を左右するのは、次の取り組みをいかに迅速に進められるかにかかっています。
変化への柔軟性が高い基盤を構築できた企業が、次世代のリーダーとなります。一方で、対応が遅れた企業は、先行する企業との差を埋めるために今後 10 年間にわたって奔走することになります。
エンタープライズ IT における AI、コンテナ、データ主権の今後について詳しくは、2026 年版 Nutanix Enterprise Cloud Index をご覧ください。
本 Nutanix 調査レポートは、米国の調査会社 Wakefield Research 社が実施した調査をもとに作成されたものです。調査は、従業員数 500 名以上の企業に勤務し、マネージャー以上の職位を持つ IT・エンジニアリング部門の経営幹部 1,600 名を対象に行われました。対象市場は、世界 14 か国(オーストラリア、ブラジル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、サウジアラビア王国、シンガポール、スペイン、英国、米国)で、米国連邦政府の職員 100 名が追加サンプルとして含まれています。調査は、2025 年 11 月 13 日から 11 月 23 日の間に、招待メールとオンライン調査の手法で実施されました。
サンプル調査の結果には、サンプリング誤差が伴います。誤差の大きさは測定可能で、インタビューの回数や結果の割合の水準によって変動します。本調査はグローバルインタビューであり、母集団(調査対象となる全ての人)に対して実施した場合の結果と比較すると、一定の誤差を含む可能性があります。グローバル全体では 95% の確率で調査結果は ±2.38 ポイントの範囲に収まると見込まれます。米国のみでは ±4.9 ポイント、その他の国々では ±9.8 ポイントの範囲で変動する可能性があります。
1 Nutanix の委託により Wakefield Research が実施した、クラウド、IT、エンジニアリング分野のエグゼクティブ 1,600 名を対象とした調査で、アプリケーションの実行環境、インフラの優先事項の変化、意思決定に影響を与えている要因を分析しています。
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