移行にまつわる誤解を解消:VMware からの移行は想像よりも怖くない

執筆者:Nutanix ワールドワイドフィールド CTO ニコラス・ホリアン

「人生において唯一不変なのは変化である。」デジタル革命の 2,000 年も前にヘラクレイトスが残した名言です。

エンタープライズテクノロジーの世界では、この格言は次のように言い換えることができます。「IT において唯一不変なのは変化である。」プラットフォームは進化し、ライセンスモデルは変わり、5 年前には確固たるものと考えられていたインフラの判断も、突然再考を迫られることがあります。多くの組織にとって、こうした現実は仮想化戦略の再評価や、場合によっては VMware から別のハイパーバイザーへの移行を意味します。

理論上は単純な選択に見えても、現実世界では、崖の縁に立っているような感覚に陥ることがあります。一歩間違えれば、システム停止、コストの急騰、予期せぬ技術的障害につながりかねません。このように感じるのは自然なことです。しかし、その多くは根拠のない不安に過ぎません。

本稿では、移行にまつわる最も一般的な誤解を解消し、移行プロセスを実際以上にリスクが高いものに見せている前提に疑問を投げかけ、適切なアプローチによってその「崖」が、現在の場所と到達すべき場所を結ぶ堅固な橋へと変わることを説明します。新しいハイパーバイザーへの移行が必ずしも混乱を伴うものではありません。むしろ、それは自社のペースで、自社の人材と信頼できるパートナーと共にモダナイズを進める絶好の機会となり得ます。

誤解その 1:移行は「全てか無か」の大ジャンプである

  • 計画されたハードウェア更新サイクルに合わせる:既に予算化されている範囲内で移行を進めることで、追加の機器購入が不要になります。スイッチや外部ストレージなどの補助コンポーネントは、その更新計画に組み込むか、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)モデルに統合可能です。
  • 通常業務と両立させる:移行作業は、既存または計画済みのパッチ適用期間やメンテナンス期間内に行います。
  • スイングギアを活用する:最近解放された HCI 対応ハードウェアを一時的なステージングスペースとして再利用することで、追加機器を購入せずに移行を加速できます。ワークロードを新規ハイパーバイザーに移行する際は、単に古い機器から新規購入品へ移行するだけでなく、HCI 対応の既存機器を積極的に解放することを検討してください。また、スイングギアの構築を計画に組み込みます。
  • 柔軟性を確保する:ワークロードの複雑性、認証要件、ハードウェアの可用性に基づき、移行順序を調整します。導入後すぐに稼働可能な「低いハードルのワークロード」を見つけ、チームの新プラットフォームに対する知識と自信を構築します。

結論:移行を、業務を中断させる一括プロジェクトではなく、通常の業務活動の延長として扱うことで、リスクは劇的に低下します。移行は、崖っぷちから飛び降りるのではなく、通常の IT ロードマップにおける次のステップであり、将来の選択肢を広げているに過ぎません。

誤解その 2:全てを再認証する必要がある

もう一つの一般的な懸念は、アプリケーションの互換性です。具体的には「アプリケーションが VMware でのみ認証されている」という懸念です。組織は、アプリケーションが「VMware 認証済み」である以上、他の環境で実行するには再認証が必要だと考えがちです。一見すると理にかなっているように思えます。しかし、よく見てみると事情は異なります。

ほとんどの場合、アプリケーションの認証はハイパーバイザーレベルではなく、オペレーティングシステム(OS)レベルで行われます。現在 Windows や Linux 上で動作しているアプリケーションは、今後も同じ OS 上で動作し続けます。例えば VMware ESXi から Nutanix AHV ハイパーバイザーへ移行しても、アプリケーション環境や依存する OS は変わりません。単に基盤となるホスティング層が変更されるだけで、アプリケーション自体には何も変化はありません。

ここに認識と現実の乖離が生じます。一部のワークロードでは追加の認証が必要となる場合もありますが、それは例外であって一般的ではありません。また、ほとんどの代替プラットフォームには既に相当数の認証済みアプリケーションが存在します。万が一必要な認証が未取得の場合でも、移行計画の中で後回しにし、ハイパーバイザー提供元から認証を取得してから実施することが可能です。

競合他社は、「我が社には数十万の認証済みアプリケーションがあるのに対して、他社はごく一部しかありません。リスクを承知で移行されますか?」などと、認証を大きな障壁として強調する傾向があります。しかしこれは現実を見落としています。現代のエンタープライズアプリケーションの大半は、一般的な OS やコンテナ上で動作しており、それらの環境は複数のハイパーバイザーでサポートされています。あるいは OS レベルでサポートと認証が提供されているため、ハイパーバイザーからのサポートが不要なケースも少なくありません。

ここで重要なのは、認証の問題に惑わされないようにすることです。実際のアプリケーションスタックと、ベンダーサポートが真に必要な OS 認証の箇所を明確にすることが重要です。ハイパーバイザーに依存する認証を特定し、それに応じて計画を立てることで、おそらく、ほとんどのワークロードは認証チェックリスト(必要性よりもマーケティング目的のものが多いため)を待つことなく、スムーズに移行できるはずです。

誤解その 3:コスト比較は同等条件で行われている

VMware からの移行を検討する際は、価格が最初の反論点となることがよくあります。しかし、こうした比較の多くは最初から欠陥があります。よくあるシナリオは次のとおりです。顧客が VMware Cloud Foundation(VCF)の更新見積もりを受け取り、代替ベンダーに「同等の」見積もりを依頼します。紙面上では代替案の方が高コストに見えます。しかし実際には、これはリンゴとオレンジを比較しているようなものです。

なぜでしょうか?多くの場合は、顧客は VCF に含まれる全機能を活用していません。利用するのは機能のごく一部であるにもかかわらず、VCF は「全機能パッケージ」として提供されます。そのため、実際に使用する機能に関係なく、VCF の全機能に対して料金を支払うことになります。たとえ顧客が依存しているコンポーネントがESXiのみであっても、それ以上のコストが発生するのです。

これに対し、Nutanix Cloud Platform 代替ソリューション製品は、実際のニーズに合わせた多様なライセンスオプションを提供しています。現在の環境に最適な階層を選択可能で、実際に活用できる追加機能を得られる場合が多く、過剰なバンドルを強制されることはありません。

また、異なる製品を単純に比較するという誤解も存在します。一部の顧客は ESXi の価格を競合他社のフルスタック HCI 製品と直接比較しようとします。しかし、問題は ESXi が単独で販売されていないことです。ESXi は VCF の一部としてのみ提供されています。現在 VMware を購入する場合は、バンドル全体が必要かどうかに関わらず、VCF を購入することになります。したがって、公平な比較は VCF と同等の統合ソリューション間で行うべきです。

結論:VMware から購入必須の製品と、代替製品で実際に必要なものを比較すると、状況は大きく変わります。要件に合ったソリューションを適正規模に調整することで、コストと価値をより密接に連動させ、使用しない機能への支払いを回避できます。

誤解その 4:チーム全員の再教育が必要になる

もう一つよくある不安は、新しいハイパーバイザーへの移行により、IT チームをゼロから再教育しなければならないということです。しかし、現実はそれほど困難ではありません。

実際には、ESXi の管理に必要な中核スキル(仮想マシンのプロビジョニング、ストレージ管理、ネットワーク設定)は応用が可能です。例えば VMware ESXi から Nutanix AHV への移行は、使い慣れたツールの別バージョン、しかもより効率化されたバージョンに切り替えるようなものです。実際 に多くの顧客は、シンプルなインターフェースや手作業の軽減により、移行後の日常業務がむしろ楽になったと感じています。

知識の習得においても、急激な変化は発生しません。移行計画期間には、スキルアップ、クロストレーニング、資格取得のための十分な時間が組み込まれています。更新サイクルと移行計画が数か月にわたる場合、最初のワークロードが移行される前から、ブートキャンプ、管理者向けガイド、さらにはベンダー主催のランチ&ラーニングセッションなどを活用できます。多くの顧客は契約締結前からこれらの取り組みを開始しています。

なお、移行を担当すべき主体(御社のITチームかベンダーの技術専門家か)は、組織の優先事項とリソース状況によって異なります。プロセスを主導したい大規模なチームがおり、人員を割く余裕がある場合は、社内主導のアプローチが有効です。一方、移行完了まで維持が必要な現行業務で既に手一杯の場合、パートナー主導の移行により経験豊富な専門知識を導入することで、スタッフは日常業務に集中できます。ハイブリッドモデルは両方の利点を兼ね備えています。パートナーに初期段階を任せる間、チームはプロセスを学びながら自信を培い、最終的に後続フェーズを引き継ぐことが可能です。

重要な点は、移行のためにチームのスキルセットを一新する必要がないことです。既存の知識を基盤とし、仮想インフラの運用をより容易にする形でスキルを拡充します。これによりインフラだけでなく、人材の将来性をも確保できます。

変化は避けられないが、リスクは避けられる

VMware 移行を内部チーム、外部専門家、あるいはその両方の組み合わせで進める場合でも、その道筋は多くの IT リーダーが想像するよりもはるかに現実的です。事実と誤解を区別することで、リスクや複雑性、コストを不必要に膨らませる誤解を回避できます。

別のハイパーバイザーへの移行に伴う典型的な懸念は、根拠のない仮定に基づいています。それぞれに現実的で低リスクな解決策が存在します。段階的なアプローチ、現実的なコスト比較、アプリケーション互換性の明確な理解、効果的なトレーニングと実行計画により、移行という「山」は、通常の道筋に沿った管理可能な「小さな丘」の連続へと変わります。

IT の世界において、現状維持は幻想に過ぎず、技術は変化し続けます。しかし、適切な戦略があれば、自社のペースと条件で仮想化環境をモダナイスできます。その結果、運用はシンプルになり、コスト効率も向上し、将来のあらゆる変化にも確実に対応できる体制を築くことができます。

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