執筆者: Dwayne Lessner, プリンシパル・テクニカルマーケティング・エンジニア
現在、欧州のIT部門は大きな緊張感の中にあります。一方では、老朽化したデータセンターの刷新、蓄積された技術的負債への対処、そしてAIワークロードの実行環境の確保といった、インフラモダナイゼーションへの切実な緊急性があります 。もう一方では、規制の強化やデータレジデンシー(データ所在国)の義務化、さらにはデータの保管場所、アクセス権限、管轄権に対する厳しい監視の目があります 。従来の「クラウドファースト」戦略の多くは、こうした二つ目の制約を十分に考慮して設計されてはいませんでした。
このギャップを埋めるために設計されたのが、「AWS European Sovereign Cloud (ESC)」です。これは欧州連合(EU)域内のみで構築されたクラウドであり、デジタル主権に特化した制御、運用の分離、そして規制の厳しい業界や公共セクターが進化し続けるEUの要件を遵守できるよう設計されたインフラを提供します 。そして今回、ここに Nutanix Government Cloud Clusters (GC2) が対応することを発表しました 。
Nutanixは、AWS European Sovereign Cloud上でGC2を利用可能にする計画を公開しました。これにより、欧州の組織は、現在信頼を置いている一貫したクラウド運用モデルを維持しながら、デジタル主権に準拠したAWSクラウド上でNutanix環境を稼働させる道が開かれます 。
さらに、ハードウェアの調達がボトルネックとなっている場合でも、GC2はその制約を緩和します。パブリッククラウド・プラットフォーム上で迅速にキャパシティを提供し、一貫した運用とモダナイゼーションの自由を維持しながらクラウド移行を加速させます 。ハードウェアの供給が正常化すれば、ワークロードを容易にオンプレミスへ戻し、Nutanixのライセンスも新しい場所へと移動させることができます 。
ここで立ち止まって考える価値があります。なぜなら、IT業界では「ソブリンクラウド」という言葉が曖昧に使われることが多いためです 。AWS ESCは、単に既存のリージョンに新しいラベルを貼っただけのものではありません。これは、通常の商用クラウド環境(AWSの既存の欧州リージョンを含む)が当初想定していなかった高度な要件に対処するために、構造的に分離・独立して構築されたクラウドです 。
データおよびメタデータはEU域内に留まります。運用のアクセス制御はEUのデジタル主権要件を念頭に設計されており、AWSの広範なグローバルインフラストラクチャーからは運用面で完全に分離されています 。金融サービス、ヘルスケア、公共セクターといった規制の厳しい業界や、GDPR(一般データ保護規則)、NIS2指令(ネットワーク及び情報セキュリティ指令2)、特定のセクター向け義務に従って運営されている組織にとって、この違いは単なるマーケティング上の注釈ではありません。それは、法務やコンプライアンスの審査を通過できるかどうかの決定的な境界線なのです 。
AWS ESCは、セキュリティ、データ管理、可観測性、そして業界固有の機能にわたる、デジタル主権に準拠したデプロイメント向けに検証済みのソリューション・エコシステムと共に立ち上げられました。このエコシステムは拡大を続けており、今後GC2もその一翼を担うことになります。
AWS European Sovereign Cloud内で動作するテクノロジーは、Nutanixの GC2 です。これは、より厳格な制御、強固な運用の境界、そして検証可能な隔離が求められる、高度に規制された環境向けに構築されたデプロイメントモデルです 。
特筆すべき点は、すべてがお客様自身のAWS VPC(仮想プライベートクラウド)内で実行されることです。Nutanixクラスター(コンピュート、ストレージ、管理プレーン)は、完全にお客様のVPC境界内に収められます 。これは単なる実装の細部ではありません。マルチテナント共有への懸念がなく、お客様の管理外にある外部アクセス経路も存在しない、コンプライアンス目的で明確かつ監査可能な境界を確立できることを意味します 。
コンプライアンス文書、監査証跡、あるいはデータの場所やアクセスに関する契約上の義務を管理するチームにとって、このアーキテクチャは「ワークロードはあなたのVPC内にあり、ESC内にあり、EU域内にある」という具体的な事実を提示できる強みとなります 。
デジタル主権の議論において見落とされがちなのが、「規制要件を満たすことは必要だが、それだけでは不十分」という点です。もしコンプライアンス達成のために、運用モデルをゼロから再構築しなければならないとしたら——新しいツール、新しいランブック(手順書)、チームの再トレーニング、ガバナンス枠組みの再設計が必要になるなら——、一つの問題を解決するために三つの問題を引き受けることになります 。
GC2は、Nutanix Cloud Platformを既存の仕組みの「置き換え」ではなく、AWSインフラへの「拡張」として提供することで、この問題を回避します 。使い慣れたPrismの管理プレーン、ライフサイクル操作、バックアップとリカバリのワークフロー、セキュリティポリシー、そしてガバナンス制御をそのまま活用できます 。管理のために、別のスキルセットやプロセスを必要とする並行したクラウドスタックを導入する必要はありません 。
実務上、これは組織が全面的な運用の刷新を強いることなく、ワークロードをESCへ移行または拡張できることを意味します。災害復旧(DR)、エンドユーザーコンピューティング(EUC)、データセンターのキャパシティ超過対応、アプリケーションのモダナイゼーション——これらすべてが、インフラチームに新しいプラットフォームでの「やり直し」を強いることなく、ESC上で実現可能になります 。
また、自分のペースで進められることも重要です。GC2は「ビッグバン」的な一斉移行や、即座の全面的なリアーキテクチャを必要としません。規制の期限、データセンターの撤退計画、パフォーマンス要件、あるいはコストモデルの変化など、ビジネス上の理にかなったタイミングでワークロードをESCへ移行できます。これは、特定のベンダーへのロックインを避けるための設計でもあります 。
主な対象は、規制の厳しい業界です。EBA(欧州銀行監督局)やDORA(デジタル運用レジリエンス法)の指針下にある銀行・金融サービス、セクター固有の国内規則の下で患者データを管理するヘルスケア組織、そしてEUや加盟国の主権要件に従う政府・公共機関などが挙げられます 。こうした組織にとって、ESCは、これまで一部のワークロードをパブリッククラウドから完全に遠ざけていた構造的な制限を解消するものです 。
しかし、その価値は最も厳しく規制されたセクターだけに留まりません。規制環境の変化を注視している企業、国をまたぐデータ義務を管理している企業、あるいは単にワークロードの場所やアクセスに対してより強力な保証を求めているあらゆるエンタープライズにとって、ESCは重要な選択肢となります。AWSの堅牢なインフラ、主権に配慮した制御、そしてNutanixの一貫した運用モデルの組み合わせは、コンプライアンス上の理由でクラウド導入を躊躇していた組織にとって、信頼できる道筋となるでしょう 。
AWS European Sovereign Cloud上のGC2は、まもなく提供開始予定です。導入を計画されている方、あるいは主権に準拠したNutanix環境が実際にどのようなものか知りたい方は、Nutanixまでお問い合わせください。
詳細については、www.nutanix.com/gc2をご覧ください。
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