Kubernetes におけるデータ管理の課題(パート 1):
ストレージ技術が追いつかない理由

執筆者:Nutanix プリンシパルプロダクトマネージャー Ramya Prabhakar

Kubernetes は、ステートレスなワークロードを扱う初期段階から大きく進化を遂げてきました。しかし、企業がより複雑でデータ集約型のユースケースに Kubernetes を導入する一方で、ストレージとデータ管理はその進化に追いついていません。本シリーズのパート 1 では、Kubernetes の進化の経緯、ストレージが遅れを取っている背景、現代の組織がインフラに求める要件を探ります。

進化する Kubernetes、立ち遅れるストレージ

初期の Kubernetes® ワークロードは、ストレージを意識する必要がほとんどありませんでした。アプリケーションはステートレスであり、永続データを維持することなく起動と終了を繰り返していました。しかし、この状況は 2019 年にコンテナストレージインターフェース(CSI)が導入されたことで一変します。CSI により、Kubernetes 内でサードパーティ製ストレージをプロビジョニングできるようになり、ステートフルなワークロードの実行が可能になりました。現在では、Kubernetes 上で稼働するステートフルアプリケーションのほぼ全てが何らかの形で CSI 統合に依存しています。

しかし、CSI は Kubernetes の利用方法を変革した一方で、新たな課題も生み出しました。最も顕著なのはデータ管理です。この技術は、クラスタ間でのデータ複製、マルチクラウド環境におけるデータ移動性、災害復旧などの、現代の組織が直面する広範な本番環境レベルの要件を満たしていません。CSI は Kubernetes がデータの所在を把握するのを支援しますが、時間の経過に伴う管理方法や障害発生時の対応策については提供しません。

現実には、現在のエンタープライズ向け Kubernetes 環境は複雑化しています。複数のクラスタにまたがり、多様なステートフルアプリケーションをホストし、ハイブリッドまたはマルチクラウドアーキテクチャでの運用がますます増加しています。その結果、ストレージとデータ管理は喫緊の課題となっており、組織はデータライフサイクル全体に対応する高度な機能をインフラに期待するようになっています。

進化する Kubernetes ストレージに対する期待

Kubernetes ワークロードがステートレスなマイクロサービスからステートフルでデータ集約型のアプリケーションへ移行するなか、ストレージに対する期待は劇的に高まっています。単にストレージボリュームをプロビジョニングするだけではもはや不十分です。組織は現在、従来の環境で利用してきた機能の提供に加え、コンテナ化インフラの複雑さと規模に合わせて調整された Kubernetes ストレージスタックを求めています。

現在の多くの Kubernetes ソリューションは、複数のクラスタにまたがる複数アプリケーションのサポートにおいて、依然として不十分です。組織は、Kubernetes 環境でエンタープライズレベルのストレージを実現するために、次の 5 つの柱 に注目しています。

大規模なパフォーマンスと容量

現代の生産環境では、エクサバイト規模以上への拡張性を備え、数十億単位のファイル、オブジェクト、ボリュームを管理できるストレージインフラが必要です。低レイテンシ―のトランザクションアプリから高スループットの分析パイプラインまで、多様なワークロードをサポートするためには、Kubernetes ストレージは拡張性を前提として一から構築される必要があります。これは、幅広いストレージタイプをサポートし、手動調整なしに性能と容量をインテリジェントに最適化させることを意味します。

スペース効率とインテリジェントなデータ管理

データの拡散は現実的な課題です。効率的なストレージ機構がなければ、複数のアプリケーションが知らず知らずのうちにデータを重複保存し、容量を浪費しコストの増大を招きます。特にスナップショットや重複排除など、必要なものだけを識別して保存できる組み込みのインテリジェンスを備えたストレージプラットフォームが必要です。圧縮アルゴリズムも、テキスト、動画、音声など、異なるデータタイプに適応しなければなりません。効率的なデータ処理は、単なるコスト削減ではなく、大規模な運用における持続可能性を支える重要な要素となっています。

最初から組み込まれたセキュリティ

セキュリティは後付けでは不十分であり、Kubernetes ストレージ層に本質的に組み込まれている必要があります。データは転送中および保存時に暗号化され、ロールベースアクセス制御(RBAC)によって厳格にアクセス管理されるべきです。組織は、誰が、いつ、どのデータにアクセスできるかを細かく制御する必要があります。これらの機能は、規制順守を確保すると同時に、秘密データが偶発的な漏洩や悪意のあるアクセスから保護されることを支援します。

高可用性とクラッシュ整合性

アプリケーションが複数のクラスタ、ノード、ストレージボリュームにまたがる場合、一貫性の維持が極めて重要となります。障害発生時においてもスタック全体でデータの一貫性が保たれることを保証する必要があります。クラッシュ整合性のあるアーキテクチャとは、アプリケーションが障害発生後もデータの破損や損失なく、中断した時点から正確に処理を再開できることを意味します。このレベルの回復力は、本番環境において不可欠です。

運用のシンプルさ

技術がどれほど強力であっても、使いやすくなければ採用されません。Kubernetes ネイティブのストレージソリューションは、組み込みのヘルスチェック、監視、自動化を備えた明確で統合されたワークフローを提供する必要があります。組織が求めるのは高機能性とシンプルさの両立です。直感的で本番環境対応のインターフェースで、強力な機能を提供することが必要です。

Kubernetes ストレージへの期待が高まる一方で、課題も増大しています。パート 2 では、組織が直面する現実的なデータ管理上の課題と、従来のアプローチでは不十分な理由について掘り下げます。

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