イノベーションを自在に推進:完全・オープンな Kubernetes プラットフォームがもたらすビジネスの将来性

執筆者:Nutanix クラウドネイティブ部門製品管理シニアディレクター Dan Ciruli

Kubernetes®が世界的に主要なコンテナオーケストレーションシステムとしての地位を堅持するなか、多くの組織や独立系ソフトウェアベンダー(ISV)は、その機能を現在および将来のビジネス成功に不可欠なカギと認識しています。クラウドネイティブコンピューティング財団(CNCF)の会員 750 名を対象とした調査(Cloud Native 2024)によると、93% の組織が本番環境で Kubernetes を運用しているか、またはテスト環境でパイロット運用を行っています。しかし、こうした組織のうち、Kubernetesを活用して真に自由にイノベーションを推進できているのは、いったいどれほどあるのでしょうか?

Kubernetes が IT 開発の現場に登場した当初、デプロイメントの選択肢は主に以下の 3 つでした。

  1. 全てが揃った独自のエンタープライズ向けソリューションを導入する。ただし、これは単一ベンダーに依存するモノリシックなブラックボックスで、カスタマイズができません。
  2. Kubernetes プラットフォームをコンポーネントごとに自社開発し、テストと検証を行い、アップデートやセキュリティ、ネットワーク管理などを自分たちで行う。
  3. パブリッククラウドの Kubernetes サービスを利用する。

最初の選択肢はカスタマイズ不可であり、2 番目は自社にスキルや経験、リソースがない組織には不可能でした。3 番目はクラウド提供のアドオン機能で容易に使えますが、追加コストがかかる場合やベンダーロックインのリスクが伴います。

幸いにも、現在では別の選択肢があります。それは、「両方の長所を取り入れた」アプローチであり、柔軟性、統一された運用モデル、長期的な運用成功のためのイノベーション加速を実現します。Nutanix のようなベンダーが提供する完全・オープンな Kubernetes プラットフォームであり、組み立てやテストなど全てを代行します。ユーザーは、モジュール型アーキテクチャやカスタマイズ性を享受しながら、オンプレミス、クラウド、エッジなど、どの IT 環境でも同じ方法で動作する統合プラットフォームを利用できます。

「完全・オープン」とは何を意味するのか?

まず、いくつかの用語を定義しておくことが重要です。

  • Complete(完全):「本番環境で使える状態」を意味します。エンタープライズ向け Kubernetes プラットフォームは、セキュリティ、可観測性、ネットワーキング、ライフサイクル管理など、実運用に必要な重要機能を独自で組み合わせることなく、全て備えている必要があります。
  • Open(オープン):Kubernetes や Cloud Native Computing Foundation(CNCF)エコシステムのその他重要プロジェクトなど、ベストオブブリードのオープンソースコンポーネントを上流版(upstream)のまま使用して構築されていることを意味します。

真にオープンなプラットフォームとは、構成コンポーネントのいずれもベンダーによる改変を受けておらず、Kubernetes システム上に追加の独自レイヤーを含んでいないものです。これらはいずれも互換性やオープン性を大きく制限する可能性があります。オープンとは、ブラックボックスではなくモジュール式であること、あるいはユーザーによる変更が可能なことも意味します。オープンなプラットフォームは、独自仕様の API で隠すのではなくオープン API を公開します。これにより、アプリケーションがあらゆる Kubernetes 環境間で移植性を維持し、アプリケーションやその他のワークロードを最適な場所で稼働させる柔軟性が得られます。

完全・オープンなプラットフォームは、組織や独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が自由にイノベーションを推進し、技術進歩や市場動向・ 顧客ニーズの変動に迅速に対応できる環境を提供します。

クローズド、またはオープン度の低い Kubernetes プラットフォームを利用するリスク

多くのベンダーが Kubernetes ソリューションを提供していますが、全てのアプローチが同じというわけではありません。中には、オープンソースプロジェクトを改変したり、カスタム API を導入したり、環境間での移植性を制限するプラットフォームがあります。また、重要な本番機能をクローズドな拡張機能にまとめることで「囲い込まれた環境」を作り、最新機能や能力を活用できない状況を生む場合もあります。

ベンダーは通常、自社だけが提供できる付加価値を目的としてこのような措置を講じますが、こうしたクローズドシステムは以下のような重大なリスクをもたらす場合があります。

  • ベンダーロックイン:独自仕様の API や改変されたコンポーネントにより、アプリケーションや運用モデルが単一ベンダーに縛られます。
  • イノベーションの制限:独自プラットフォームには最先端の進歩が組み込まれていないことが多く、オープンソースコミュニティによって開発された競争優位性をもたらす可能性のある機能や能力を逃す恐れがあります。
  • サイロ化された運用:多くの組織では、オンプレミスとクラウドで別々の Kubernetes ソリューションを使用しています。これは、一部の Kubernetes ソリューションが特定の環境でのみ動作するため発生する場合もありますが、もう一つの理由は、クラウド環境では状況が異なり、別のチームが必要だという一般的な(しかし誤った)前提に基づいています。このサイロ化されたアプローチは、異なる運用プロセスを持つ複数のチームを生み出します。
  • 移植性の低下:異なる環境でアプリケーションを実行できることは、そもそもコンテナを利用する基本理念の一つです。しかし、クローズドなプラットフォームでは、エコシステム全体でアプリケーションを同じ方法で実行することが不可能になる場合があります。

一方で、プラットフォームのオープン性を維持し、顧客に付加価値を提供する方法を確立しているベンダーもあります。オープンコンポーネントの周りに独自開発またはプロプライエタリな拡張機能と自動化を追加することで、ベンダーロックインを防ぎ、必要に応じて他ベンダーや他システムに移行できる安心感を提供しています。

エンドユーザーにとってのメリット

完全・オープンな Kubernetes プラットフォームを選択することで、以下のような重要な戦略的メリットを享受できます。

  • CNCFのイノベーションへのアクセス:最新のオープンソースプロジェクトと連携することで、世界中の数千人の貢献者による最先端技術を活用できます。プロプライエタリベンダーが分岐したブランチで追いつくのを待つ必要はありません。
  • アプリケーションの移植性:オープン API と標準インターフェースによりベンダーロックインを回避し、パブリック/プライベートクラウド、オンプレミス、エッジ環境など、さまざまな環境間でアプリケーションを自由に移動できます。
  • 統合されたハイブリッドマルチクラウド運用:クラスタ API などのオープン API を備えたオープンプラットフォームやその他の標準規格を活用することで、あらゆる環境において一貫した Kubernetes 運用が可能となります。これによりコスト削減、セキュリティの簡素化、運用複雑性の低減が図れます。
  • 最適なカスタマイズ性:モジュール式のオープンプラットフォームにより、オープンソースと商用ソリューションを自由に組み合わせてビジネスニーズに対応できます。単一ベンダーのスタック全体に依存する必要がなくなります。
  • コスト削減とチーム規模の縮小:あらゆる環境で統一された Kubernetes 運用を実現することで、専門チームの必要人数を減らし、効率性を向上させ、管理コストを削減できます。

完全・オープンなKubernetesプラットフォームが提供する柔軟性は、今日の急速に変化するデジタル環境において極めて重要です。例えば、パブリッククラウド上でアプリケーションを開発し、必要に応じて容量をオンデマンドでスケールアップ/ダウンさせることが可能です。その後、動的でない本番ワークロードをエッジ環境やオンプレミスに移行することで、パフォーマンスの向上とコスト削減を実現できます。

ISV にとってのメリット

オープンな Kubernetes アプローチは、ISV にとっても同様に重要です。主なメリットは以下のとおりです。

  • 市場投入までの時間の短縮: オープンソースのコンポーネントや API を用いて開発することで、ISV は大規模なカスタム統合を必要とせず、迅速にソリューションをリリースできます。
  • エコシステムの拡大: プラットフォームが数多くの他のソリューションと互換性を持つため、ISV はより広いターゲット層を獲得し、収益増加の可能性が高まります。
  • オープンコアモデルのサポート:ISV はオープンソースプロジェクトの商用版(強化されたロードバランサー、セキュリティツール、可観測性ソリューションなど)を提供し、プラットフォームが提供するオープンソースソリューションからのアップグレードを顧客が容易に行えるようにします。

オープンプラットフォームはオープンソース開発と技術にとって健全なエコシステムを構築します。このエコシステムはイノベーションを促進し、開発者がソリューションを継続的に改善する動機付けとなり、顧客に多様な選択肢を提供します。これは CNCF コミュニティの健全性と持続的な成長にとって不可欠な要素です。

モジュラー性の強み

オープンな Kubernetes プラットフォームを選択することに加えて、モジュラー性を備えたプラットフォームを選択することが重要です。モジュラーシステムとは、ネットワーク、イングリッシュコントローラー、監視、セキュリティといった主要コンポーネントが全てデフォルトで含まれており、完全に本番環境対応のプラットフォームを意味します。一方で、必要に応じてコンポーネントのカスタマイズや交換も容易です。

例えば、オープンな Kubernetes プラットフォームでは、標準で一般的なオープンソース負荷分散装置が採用されている場合でも、システム全体の整合性を損なうことなく、別のオープンソースまたは商用ソリューションに置き換えることが可能です。この柔軟性は、カスタマイズが制限される、あるいは不可能なモノリシックなプロプライエタリプラットフォームに比べて大きな進歩です。

モジュール性があれば、組織固有のニーズに合わせて Kubernetes を柔軟に構築し、変化する要件への対応や新しい革新的なソリューションの導入を妨げることもありません。

オープン・モジュール式 Kubernetes の優位性

完全・オープンなモジュール式 Kubernetes アプローチの利点は、現在多くの面で組織の改善に貢献しています。

例えば、一部の組織では、変動する需要期間中に柔軟な従量課金制とほぼ無限のスケーラビリティを活用するため、パブリッククラウド上でアプリケーションを開発しています。その後、コスト最適化のために本番ワークロードをオンプレミスデータセンターへ移行したり、パブリッククラウドへのアクセスが全くないクルーズ船、軍事基地、その他の遠隔エッジサイトへ移行することさえあります。

完全・オープンな Kubernetes プラットフォームを採用することで、これらの組織は環境に関わらず、一貫したアーキテクチャ、セキュリティモデル、運用モデルを維持できます。このプラットフォームは、管理オーバーヘッドの削減、セキュリティの強化、俊敏性の向上を目的として設計されています。

Kubernetes 戦略を将来を見据えた設計に

Kubernetesプラットフォームを検討される組織は、最優先事項として将来を見据えた設計を念頭に置くべきです。

CNCF やクラウドネイティブ環境は驚異的な速度で進化を続けています。新たなプロジェクト、標準、ソリューションが絶えず登場しています。オープンでモジュール式の Kubernetes プラットフォームを選択することで、将来のイノベーションを容易に採用できる体制を整えることができます。

完全でオープンな Kubernetes プラットフォームは、あらゆる業界で標準的な ITモデルとなりつつある、ハイブリッド環境やマルチクラウド環境の運用も簡素化します。環境を横断して機能する単一の統合プラットフォームを導入することで、組織の成長に伴うコスト、セキュリティ、パフォーマンスの管理が容易になります。

オープン化は技術的判断にとどまらない、戦略的な選択

Kubernetes の未来は、完全性とオープン性を兼ね備えたプラットフォームにあります。これらは、本番環境向けのソリューションを全て組み立て済みでデプロイ可能な状態で提供すると同時に、イノベーションを推進し、ベンダーロックインを回避するためのオープン性、モジュール性、柔軟性を備えています。

完全でオープンな Kubernetes プラットフォームを選ぶことは、単に最適な技術の採用ではありません。運用効率の向上、イノベーションの加速、ベンダーへの依存排除、長期的な競争優位性を築くための基盤を構築することを意味します。

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