企業
「救急医療」「高度医療」「地域医療と予防 医学」「医療人の育成」という4つの基本方針を 定め、地域における急性期専門医療を提供 するべく高度で専門的な医療を24時間体制で 提供。地域の医療機関との連携強化や、患者を 中心としたチーム医療などにも積極的に取り 組んでいる。
業界
医療業界
ビジネスニーズ
- 仮想環境に適した仕組みづくり
- 集約することでのレスポンス悪化を回避
- ハードウェアの販売・サポート終了にも影響 の少ない基盤構築を目指す
導入製品
- Nutanix Enterprise Cloud Platform
- NX-3000シリーズ(9ノード)
ソリューション
- VMware ESXi
導入メリット
- サーバーラックのスペースを3分の1まで圧縮
- システムレスポンスが大幅に改善
- OSの起動時間も半分以下
- ハードウェアを含めた全システムやアプリ ケーションの再構築が必要ない長期システム ライフサイクルを実現
導入の背景
社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院は1935年、“医療を通じて地域社会に貢献します”を理念 に熊本市に開設されました。基本方針は「救急医療」「高度医療」「地域医療と予防医学」「医療人 の育成」の4つ。「断らない救急」をモットーに、地域における急性期専門医療の中核病院として、 高度で専門的な医療を24時間体制で提供しています。病床数は一般病棟や救命救急センターな どを含めて400床で、全職員数は約1900名。19の標榜科が設置されており、地域の医療機関と の連携強化や患者を中心としたチーム医療などにも積極的に取り組んでいます。
同院では、部門や診療科目ごとにさまざまな医療情報システムが稼働しています。そのICT基盤を 支えているのが医療情報部です。安定稼働性と高可用性が求められるシステムインフラを担当 する部門ですが、医療情報部 医療情報システム室 室長代行 中熊英貴氏は常に新しいものに チャレンジする姿勢が大切と語っています。「当院は医療において日本一、世界水準を目指して います。それはITにおいても同様です。ITにおいて日本をリードするような病院を目指しています」と 中熊氏は力説します。また外部パートナーとWin-Winな関係を目指し、さまざまなことに挑戦し たいと語っています。
同院が2011年に電子カルテの仕組みを導入した際、多くのサーバーを院内のサーバルームに展開 する必要がありました。「サーバルームのスペースを確保するため、これまで稼働していた医療情報 システムを新たに仮想環境へ移行しました」と同室 主任 野口忠祥氏は当時を振り返ります。その後、 仮想環境上で新しいシステムが展開していくにつれ、サーバーとストレージを繋ぐスイッチのパフォー マンスが徐々に低下していくことに。「最終的に107ほどある医療情報システムが仮想環境で稼働 していました。しかし、システムのバックアップ時など高負荷なタイミングでレスポンスが悪化し、 アプリケーションのパフォーマンスに影響が出ていました」と野口氏は語ります。
その後、処理能力の高いスイッチに切り替えることで運用上は事なきを得ましたが、医師や看護師 などのユーザーに対して、使いやすいシステムを提供するためには、拡張性の高い仮想環境が 必要でした。
「Nutanixを導入することで、院内のインフラ ながらクラウドのような考え方ができるよう になりました。理想はクラウドのように、 必要に応じて柔軟に増減できるような 仕組みです。Nutanixを活用することで、 その考え方に近づくことができました。」
社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 医療情報部 医療情報システム室 主任 野口忠祥氏
ソリューション
そんな折、最初に構築した仮想環境のストレージのサポートが終了することになり、新たな環境を 模索することになりました。新たなシステムでは、ハードウェアのサポートが終了した場合でも継続 してシステムが活用できる、拡張性の高いものを検討したと野口氏。「病院では簡単にシステムを 止めることができません。稼働したまま新たな環境に移行でき、拡張が高く負荷分散が容易なシス テムを導入したいと考えました」。
そこで出会ったのが、ハイパーコンバージドインフラの概念とNutanixが提供するエンタープライズ クラウドプラットフォームでした。「従来のサーバーとSANスイッチ、ストレージから成る3層構成とは まったく異なる考え方に驚きました。まるで異次元の仕組みのように感じました」と野口氏は最初の 印象を語ります。利用率の上限を設定した上で物理サーバーを増設するなど、仮想環境をうまく 活用してきた同院だけに、システムの中断なしにノードを追加するだけで柔軟に拡張できることは とても魅力的だったと野口氏。Nutanix製品は同じクラスター内の複数の世代のサーバーとスト レージをサポートし、長く製品を使用できるように設計されていました。
また、増設すればするほどレスポンスが向上するというNutanixならではの特徴についても、野口氏は 期待を寄せています。「集約していくことで管理効率が向上するだけでなく、運用コストの面でも メリットがあると考えています。仮想化をうまく活用できるという点でも、ハイパーコンバージドと いう概念を基盤としたNutanixのエンタープライズクラウドプラットフォームは最適な選択だと 考えています」。
その結果、同院の部門システムを稼働させるための新たな仮想環境基盤として、Nutanix Enterprise Cloud Platform NX-3000シリーズが採用されました。
導入効果
2016年末には、これまで運用してきた仮想環境上で稼働している100以上の部門システムを、 新たに導入したNutanix Enterprise Cloud Platform NX-3000シリーズに移行しました。 従来のサーバー、スイッチ、ストレージの3層構成の仮想化環境が一つの機器に集約され、移行前の 仮想化環境と比較すると、システム室の占有スペースを3分の1程度にまで縮小することに成功 しました。
システムのレスポンスも大きく改善するものと期待されています。「既存の医療情報システムの中に は、負荷の高い時間帯に操作するとボタンをクリックしてから結果が戻ってくるまでに、かなりの 時間を要する場合もあります。新たな環境に移行すれば、大きくレスポンスが改善できるはず」と 同室 東賢剛氏は語っています。野口氏も「例えば薬剤関連のサーバーは、月に1度、定期的に再起動 していますが、Nutanixに移行した後は目に見えて起動速度が改善しています。アプリケーションの 起動も早く、OSの起動だけを見ても半分以下の時間で立ち上がるようになりました」とその効果を 実感しています。
新たな環境に移行したことで、これまでハードウェアの寿命にあわせて再構築せざるを得なかった 医療情報システムを長く使えるようになり、将来的に発生するシステム入れ替え時のコスト削減が 期待されています。「ノードの一部のサポートが終了しても、新世代のノードを追加するだけで新たな 環境に移行できます。ハードウェアにアプリケーションが影響しない環境が構築できました」と 東氏は評価します。
また野口氏は、「Nutanixを導入することで、院内のインフラながらクラウドのような考え方が できるようになりました。理想はクラウドのように、必要に応じて柔軟に増減できるような仕組み です。Nutanixを活用することで、その考え方に近づくことができました。パブリッククラウドを利用 する時がくれば、その際には院内の環境を縮小することもできるはず。そんな柔軟性がNutanixの 魅力」と語っています。同時に東氏は、その魅力について「これだけメリットがある仕組みであれば 採用しない理由がありません。他の病院もぜひチャレンジすべきです」と力説します。
なお、院内に展開しているさまざまな医療情報システムを支えているのが株式会社ブレスシステム ソリューション部 部長 松尾健司氏で、今回のプロジェクトにおいても仕組みの提案から構築まで 含めてシステム導入を強力にバックアップしてきました。「必要なときに必要な分だけ投資できる ような、長い目で見てコストが平準化できる仕掛けを提案したいと考えていました。今回はその 理想に近づくことができました」と松尾氏は語ります。同社は、現時点で考えるシステムインフラに おける最適解の1つとしてNutanixを評価しています。
今後の展望
今後について中熊氏は「システムのライフサイクルが長期化できたことで、ノード拡張する時期を 調整しながら、新旧の入れ替えに負担がかからないようにしたい」と語ります。また東氏は、100 以上の部門サーバーや電子カルテなどの仕組みも含めて仮想化に取り組んでいき、いずれはすべて 集約したいと語ります。「運用管理の点からも、複数の人間でサポートしていくためには可能な限り シンプルなものが求められます。一部残っている物理環境では、テープを使ってその場でバックアップを 取らなくてはならず、災害対策の観点からは課題が残っています。その環境を解消して耐障害性を 強化していくことも念頭に、仮想化をさらに進めていきながら集約を加速していきたい」と東氏。
野口氏は、NutanixのAHV(Acropolis Hypervisor)に期待を寄せています。「今使っているVMware のvSphereライセンス費用を考えると、大きくコストを減らすことが可能です。選択肢の1つとし て、今後、AHVを検討していきたい。」また、医療情報システムの仮想化については、部門によって はまだ壁が存在しているところもあり、Nutanixの認知が今以上に向上することを野口氏は願って います。「仮想環境に移行する際、各部門から高いレスポンスが要求されることも多々あります。 仮想化への敷居を下げる意味でも、“Nutanixなら大丈夫”と言ってもらえるような存在になっ て欲しい。」