業界
インターネットサービスプロバイダ
ビジネスニーズ
物理サーバが増加し運用が負担になり、 エンジニアの労力と時間が取られていた。 タワー型のサーバが多く、スペースの余裕 もなくなってきていた。お客様にサーバ環 境を提供する場合、サイジングから機器の 追加調達、構築、納品まで1~2カ月は必要 で、リードタイムの短縮が課題となっていた。 仮想化でサーバ1台あたりの単価も下げたい という営業現場からの希望もあった。
ソリューション
- Nutanix NX-1000シリーズ
- Nutanix NX-6000シリーズ
導入メリット
- サーバ環境の納期短縮
- 低価格でのお客様提供
- 省エネ、省スペース性
- 運用負荷の軽減
- 柔軟な拡張性
企業概要
ISPやデータセンターサービス事業者は、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャーにハイパー バイザー機能が搭載されたプラットフォームを望んでいました。このニーズに応え登場したのが Nutanix Acropolis Hypervisorです。サーバ、ストレージ、ネットワークのみならず、ハイパーバイザー も包含することで、ターンキー型のソリューションを提供できます。
2015年3月、いち早くNutanix Acropolisを導入したのが、株式会社ネットコムBBでした。同社は、2005 年に佐賀新聞グループ企業として誕生したインターネットサービスプロバイダ(ISP)であり、サーバ マネジメント、Webサイト制作、システム設計までトータルでサポートするITベンダーです。
佐賀新聞社はIT活用で定評があり、1996年に地方紙としては全国初のISP事業を開始しています。 「ネット業界の幅広いニーズに対応するため、そのノウハウを引き継いだのが当社『ネットコムBB』 です。2007年からはISP事業の『S.N.I-佐賀新聞・長崎新聞インターネット』の業務も受け継ぎま した」と同社 第一営業部部長 兼 制作部アドバイザ 田中 淳 氏は紹介します。現在はエリアを超え、 上場へ向けてサービス基盤強化と新規サービスの拡大に挑戦しています。
導入の背景
サービスの拡大につれ、技術およびビジネス面の課題が浮かび上がってきました。
技術面では、物理サーバの増加が運用サイドの負担になってきました。お客様向けの機器は、物理 サーバを同じスペックで予備機含めて複数台を購入。電源やディスクなどを冗長化させていました。 手元に予備機があるため、通常運用での不安はさほどありません。しかし、障害の兆候があれば、予 備機に移行しなければならず、OSやアプリケーションのインストール、システムを停止させての切り 替えなど、エンジニアの手間となっていました。また、安価なタワー型サーバが多く、上下方向に積め ないためスペースに余裕がなくなって来ました。
ビジネス面では、コストが課題となっていました。サーバは同一仕様を複数台所有して保守負担を 抑えていたものの、購入後の使い方によってリソース使用量の差が出てくるなど、非効率な面が出て きました。
「お客様からの要望でサーバを提供する場合、サイジングから機器の追加調達、構築、納品まで1~2 カ月は必要となり、納期を短縮したいと考えていました。仮想化によりサーバ単価を下げたいという営 業現場からの要望もありました」と、田中氏は説明します。
導入の経緯
これら課題を解決するために、抜本的な見直しにとりかかったのは5年以上前のことになります。「長く かかったのは、仮想か物理か、またコストや拡張性の確保などの面で、従来のソリューションに決定打 がなかったからです」と、田中氏は振り返ります。仮想環境であれば割安に提供できることから、将来的 に仮想環境に進むことは概ね決定しました。その時点で何社かに相談して、見積もりも取っています。
有力だったのはVMwareでした。しかし、初期コストを抑えるためにサーバ3台までの低価格なライ センスを使っても、すぐにまかなえなくなることが判明し、採用には至りませんでした。
その後、OpenStackが注目を集め、担当エンジニアがテスト構築しましたが、バージョンアップサイ クルが早く、商用運用には不向きと判断。そこで、コスト面からKVMとHyper-Vに絞って検討するこ とにしました。
しかし当時、KVMを利用する管理GUIは、RedHatのRHEVのみが実用に耐えうる状況であったた め、ライセンス価格面でメリットを出すのが困難でした。このため、Hyper-Vの利用に決まりかけまし た。そして、さらに機器構成をメーカ各社と相談しながら検討していくことになります。
多くのエンジニアが「サーバ構築・ 保守」を容易にできるようになりました。 サービスの拡大を期待できます
株式会社ネットコムBB 第一営業部部長 兼 制作部アドバイザ 田中 淳 氏
NUTANIXの選択理由
これらの検討を進めていく中、同社ではNutanixを知ることになります。Nutanixは、KVMを標準で サポートしており、KVMをラッピングした直感的なGUI「プリズムUI」により管理が容易なため、特 別なトレーニングなどの必要もなく、対応できるエンジニアの数も増やせることがわかりました。さら に、KVMを選択してライセンスコストを大幅に下げることも可能となります。
最終的には、KVMベースのNutanixにするか、各社の従来型 サーバ群と大容量ストレージにHyper-Vを載せる組み合わ せにするかの、2者択一になりました。
「ここにおいて、弊社ではWindowsよりもLinuxの利用が多 いこと。管理上Linuxとの親和性において、Hyper-Vでは多少 の不安がありました。また、大容量ストレージは買い増し時の 投資が大きくなってしまう難点があります」と、田中氏は決定 の背景を語ります。
価格の面から見れば、サーバ+大容量ストレージにHyper-V という組み合わせは割安で、Nutanixプラットフォームと KVMの組み合わせは少々割高でした。それでも、Nutanix導 入を導入したのは次の3つの理由がありました。
1つ目は、ハードウェア管理において、Nutanixはノード追加の 作業量を極端に短縮できること。2つ目はNutanixはスモール スタートでき、あとは必要な時に必要なリソースを、必要な分だけ拡張するという運用ができること。 ユーザ数の増減があるサービスの提供事業者としては、投資の回収不安を低減できる点を評価しま した。3つ目は、100ボルトの電源をサポートしたモデルがあること。どのようなマシンルームにもラックと スイッチングハブとUPS、そして電源があれば設置できるため、拡張が容易です。
「これら魅力ある機能を、Nutanixでは標準的なマルチノードサーバ上に構成されていて、何の問題 もなく動作します。技術の先進性や会社の将来性を認め、Nutanixの採用を決定しました」と、田中氏 は強調します。
導入メリット
今回構築したプラットフォームはNutanix NX-1350(3ノード)です。
物理的な設置と既存インフラへの接続用ネットワーク機器の設定は自社で実施。ファイヤウォールを 介してISPのバックボーンへつなげるため、できるだけシンプルな設定にして、VLANの通し方などネッ トワークの設計には細心の注意を払いました。機器の増設・クラスタへの組み入れは自動になってい るので、今後は自力で増設していく予定です。「プラットフォームを立ち上げ後のサーバ構築は、予定し ていた通り数分でできるようになりました。仮想サーバが起動し、マイグレーション等の機能テストが できてから、SE/プログラマチームとネットワークチームとで協力して、本格的なサーバの移行を開 始しました」(田中氏)。
Nutanixを導入して、同社では3つのメリットを得たと語ります。
1つ目の効果は、冗長化されたサーバ環境の設定が素早くできること。従来であれば、サービス要件 やヒアリング結果をもとに機種選定し、手持ちの機械で足りなければ発注をして、納入されたらRAID 設定をして……1カ月から2カ月はかかっています。Nutanix導入後は、追加機器の設定はわずか数分 で完了します。
2つ目が、スペース効率の向上。計画では物理サーバ約30台が、Nutanixのプラットフォーム1台 (2U)に収まる予定です。移行が済めば、タワーサーバの区画を“再開発”して、ハウジング用スペース の拡張や他の用途への利活用を検討しています。
3つ目は、エンジニアの多くが「サーバ構築・保守」が容易にできるようになったこと。同社にはISP事業 以外にシステム開発やWeb制作、映像制作、通販コンサルなど幅広い業務があり、それらのサーバ構 築作業が発生するとネットワーク担当のエンジニアがサポートしていました。Nutanix製品は管理が 容易なため、特別なトレーニングなどの必要もなく、今後は、ソフトウェア開発を主に担当するSEやプ ログラマなど、各分野のエンジニアが自力でサービスを立ち上げることができます。
「弊社にとって、Nutanixのソリューションは期待どおりかそれ以上であると言えます。リソースの不 安なくビジネス拡大に挑戦できます」と、田中氏は顔をほころばせます。
今後の展望
今後のビジネス展開や展望として田中氏は、次のように語ります。「サービス拡張にともない、Nutainx NX-6000シリーズを追加導入しました。この拡張により、すでに100TBクラスのプラットフォームとなり ました。また、ストレージ部分の冗長化における仕様において、保護領域の利用効率が良いイレイ ジャー・コーティング(消失訂正符号)の利用も検討しています。 さらに、プラットフォームとして有り余 るパフォーマンスを生かすべく、データセンターのバックボーンネットワークと直接接続して、より柔軟な サービス提供をできればと考えています。」